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滝沢かおり様よりvvv

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 日向は舌打ちすると、観念してムクリと起き上がった。自然、短い溜息が低く吐きだされ、夜のしじまに滲んだ。
 バサリ、とヤケクソ気味な乱暴で大雑把な動作で掛け布団を剥ぐと、ベッドサイドに足を降ろしつつ、横目でサイドボードに置いてある持参した旅行用の時計を見やる。見慣れたそれが腹立たしい程の素っ気無さで規則正しく時を刻みつつ、朝の4時前を示している。この季節、未だ外は夜半と全く変わりのない暗さだろう。夕食後の練習時の、あの墨を流したような真っ暗な空を思い描き、もう一つ溜息をついた。もはや眠れそうにはない。
 短期の合宿だったが、気が充実し、期間中嘘みたいに全くそんな風に見てやしなかった。―――のに。

 練習で見た肢体が目の前をチラついた。昼間見た、その時はただただパワフルでシャープだったその映像は脚色され、今は官能的な画像となって目眩めく脳裏に展開されるのに参った。

 日向は深く腰掛け、肘を太腿に付けて前で気だるげに指を組み、俯いて床のカーペットを睨んでいたその顔を上げた。そうして、落とされた照明の部屋、黒々と続くカーペットを辿ってその真向かいにあるベッドまでゆっくりと視線を這わせると、その上に横たわる膨らみに目を凝らした。
 実際、どのくらい前から目が覚めていたのだろう。ほぼ完全に近い暗闇の中の筈なのに、ここから向かいのベッドの布団の具合で仰向けに寝ているであろうという事まで見て取れてしまうとは。
 静まり返った部屋。微かに上下する、その潮の満ち引きにも似た静かな呼吸の動きに引き寄せられるように、日向はゆっくり立ち上がると件のベッドの傍らに立ち、長くなってきた前髪を一つ掻き上げ、見下ろした。

 朝起きたその時、太陽の光りが入らず朝なんだか夜なんだか分からない真っ暗な状態であるのが好きではない松山は、遮光のカーテンをあえて細く開けて眠りにつく。
 そうして10センチ程開けられているカーテンの隙間から下の薄地のもう一つのカーテンを透過して、ごく微かに月明かりが射し込んでいた。
 光りの粒子が、松山の滑らかな輪郭に沿って流れラインを淡く縁取り、瞼の縁に小さな湖のように溜まっている。
 自分の押し殺した息が、一つ一つ胸に突き刺さるようだった。
 
 日向は半ば夢遊病者かなにかのような危うさで無意識に近寄り身体を屈めると、そのベッドの上に膝を付いた。ベッドの木枠が新たな体重を受けて、ギシ…と不快そうに軋んだ。しかしそんな事は、実際、既に気にもならなかった。もう…堪えられなかった。

 規則的な息遣い。その口元から静かに吐き出される生温かい息の感触。松山が、この下で、確かに…生きてる。この下に、居る。

 実際はこんなに間近で見つめても、その口が本当に開いているのかどうかよく見えなかった。そんな微かな口元。それを自分の鼻先に当たる風だけでは無く、実際に触れて、触れて確かめたい…。
 両手を広げて松山の肩の横の布団に手を付き、覆い被さった状態で、ゆっくり身体を落として近付いた。本当にスローモーションのように感じられた。ただ自分の内を痛いくらいに打ち続ける心臓の拍動がその感覚を裏切っている。そっと顎近くの頬のラインにキスを落とした。ああ、やっぱり駄目だった。そんなので気が済む筈が無い。

 実は、ハッキリ言って、直ぐに挿れてしまいたい位の衝動…なのだ。その衝動のまま吸付くように口付けた。段階を追っている余裕もなく、じっとしていられない舌は先程から誘われているようで仕方が無かったその柔らかい唇をなぞった。
 啄ばんで、ちゅく…と可愛らしく響く水音にすら昂ぶる。
 自分の吐く息に急速な勢いで熱が加えられて来ているのが分かった。胸の中で、松山、松山と渦巻いている思いがその吐息と一緒にうわ言のように出てしまいそうだ。
 しばらくそうして飽きずに松山の口唇を貪っていると、「…ん……っ」と、ようやっと微かな反応があった。
本当はこのまましばらく気が付かずに好きなだけキスさせて貰いたかったのか、それとも絶対激怒されるだろうがしかし返される反応を見たかったのか…ということが考えるともなしに脳裏に過ぎった。


 「ふぁ…。にゃ…っに…?」
 何となく反応を待って、見下ろして見つめていると、寝惚けてトロンとした瞳で見上げてくる松山と出会った。恐ろしいくらい邪気のない濡れた黒い瞳と、今まで聞いたことの無い程に舌足らずな口調に息が止まった。コイツは本当に素のままで悩殺してくれる…。だからか。だからいつもいつの間にか事に及んでしまった時、「俺だけのせいじゃない」という思いが、無くも無い変な腹立たしさと共に生まれてしまうのかと改めて思う。
 しかし今日は腹立たしいところでは無かった。よくよく見ればほんのりと上気している目元に自分もますます浮かされて、日向は構わず松山のパジャマ代わりのトレーナーの裾から手を差し込んだ。
 「ひぁッ!冷…ッ、…な…!?」
 こんな風に掌全体で松山の肌に触れるのは久しぶりだった。眠っていたせいだろう、いつもよりも温かく感じられる肌理の細やかな身体の幹。きっと、触られる松山にとって自分の手はかなり冷たく感じられるだろうと思いつつ、吸付くように滑らかな感触に動きを止めることは出来ず、日向は味わうように撫で上げた。
 「ちょ…ッ、なに?…ぁ、……待ッ、…っ、ん!」
 未だ寝惚けて抵抗らしい抵抗を見せないのを良いことに、ねっとりと這わせていたその手を少し浮かせ、見当を付けて胸の中心を擦り上げる。
 途端、「あっ!」と、一際ハッキリとした高い声が上がり、ブルッとまるで鳥肌を立てるみたいに震えた。
 「待っ…、ちょ、待ってって……!」
 流石に自分が何をされているのか、されようとしているのか分かったような…顔。そんな表情を垣間見せて、しかし未だ少し重たげな目を剥いて日向を睨み、「待て」を繰り返した。

 「…っと、オレ…こんな時何て言えばいいんだ…」
 「え?」
 「――あ!いや、そうじゃなくて!;;」

 そしてボウとうわ言のようにボンヤリと呟いた科白に、日向が不審な表情を向けると、松山はハッと気付いたように慌てて叫んだ。……真っ赤だ。
 日向はそんな松山をマジマジと見下ろしながら、今の松山の素の反応を思い返し、そしてどうしたって自分の良い方に解釈しようとしてしまっていた。

 実は未だ何度も行為を持ったわけではない自分達。初な松山は、最中「嫌だ」とか「止めろ」と言う事が多い。それは、それは恥ずかしいからだ、という事に日向は大体気が付いていた。それには気付いてはいたが、それ以上に、実はいちいちどう反応していいか分からない程にも初だったという事、でもあったというのだろうか。

 「松山…」
 日向は己の双眸に思いが篭ってしまうのを頭の端で照れ臭いと思いつつ、しかし構わずそのまま見下ろした。自然細くなった視界の中に、まだ瞳をキョトキョトして戸惑いを隠せない松山の幼げに見える顔が映る。普段だったら「抱かれんの、実はそんなに嫌じゃない?」等と揶揄半分に聞いてもみたいところだが、きっとそんな事を言ったら、ますます混乱を来たして逆ギレでもしそうかと内心可笑しくなって止めておいた。
 「ひゅう…!…ちょ、オイ!オレはヤダかんな!?!離せバカッ!!」
 「おっと」
 その日向の顔に、松山は我に帰ったようにハッと密かに息を付くと、拘束されていた腕を振り解きざまに日向の胸元に繰り出した。ようやく完全に目が醒めたらしい松山らしい言動だが、取り合えず先は読めていた日向は身体を背けて拳をかわすと、その腕をもっとガッチリと強く今度は頭の上に縫い付けた。
 「テメ、一体何考えてんだ!?ゲ!未だ4時10分!?信じらんねーな!ケダモノ!!」
 辺りが寝静まっている気配にトーンを落としつつではあったが、ぎゃぁぎゃぁと騒ぐ松山をよそに、日向は拘束したその手に一層力を込めると、顔を屈めて口元に囁いた。
 「いいじゃねぇか。抱き合うのに時間なんて関係ねぇだろ」
 「つぅかテメェが勝手にムラムラきただけじゃねぇか」
 「そう。これは単なる夜這いです」
 「ッテッメーーーーー!!!」
 ニヤリと笑って抜かしたふざけた科白に、怒りのあまり周りの部屋の皆がまだ寝ているという事を失念して、とうとう叫んでしまった松山だったが、その口を噛み付くような勢いで口付け塞いだ。

 「んんッ!?」
 あっという間もなく強引に口角に舌を差し入れ口を開き、それを閉じる余地も無い力強さと性急さで奪う。遠慮のかけらもなく好き放題に口腔内を動き回る舌に、松山の眉根が苦しげに寄せられ、喉をヒクリと喘がせる気配が伝わってきた。
 しかしそれに構わず、濡れた舌を閃かせ、逃げを打つ舌を絡めとって強く吸う。一方的に奪おうとする意思ばかり先行する口付けを続けつつ、更に奪い尽くそうとばかりに、日向の手が放埓な動きを始めた。
 「……ぅ、んッ!」
 乱暴な動作でトレーナーをたくし上げ、再度迷うこと無く胸の飾りに触れる。先程弄られて、どうやらヒリヒリと敏感になっているらしいその突起は、指の腹で擦り上げるだけで松山の息を詰めさせ、その背中を反射的に撓ませた。立て続けに、硬くしこってささやかに立ち上がった乳頭を痛いくらいの鋭さで弾き、引っ掻かいた。
 茫とした月明かりの下、松山の肢体はきっと艶っぽいに違いない…。そう思って余裕のない衝動を少しばかり押し殺して、口唇を離し身体を上げた。
 
 至近距離で見下ろした先、胸の上まで肌蹴られた上衣から覗く白い肌が輝いていた。充血して紅くなった小さなアクセントがそこにくっきりと一つ色を添え、えも言えないエロティックさを醸し出していた。ゴクリ、と日向の唾が知らず喉を嚥下した。そして、松山のなだらかな脇のラインが喘ぐ息で波打つのを見た日向は耐え切れず、その引き締まった腰を気短な動作で掴み上げ、腰に続くラインを露わにすべくジャージに手を掛け引き降ろした。
 「待…ッ!ヤメ…!」
 自分でもどうかしてると思うほど余裕が無かった。必死で抵抗する松山を、上から両の膝頭で押さえ関節を拘束し体重をかけてガムシャラに抑えつけ、否応無く力の抜ける感じ易い箇所ばかりを知能犯の狡さで嬲る。
 「ヤ…ッ!も!くぅん…ッ、」
 2泊3日の短期の合宿も今日で終わり、明日には離れ離れになるという感懐がそうさせているのだろうか。いや、そうではない、と日向は松山に施す愛撫の手を休めること無いままそう思った。これは、この情動は、そんなセンチメンタルなものでは無いだろう。

 もっと、もっと本質的で、直情的なもの。ただ、そこに松山が居て、ここに俺が居るから、とでもいうような酷く単純なものに違いない…。

 「日向…!酷ッ、こんなんって、ねぇだろ…!!」
 「…これは夜這いだって言っただろう」
 自分の考えのシンプルさに可笑しくなる。しかし、ほぼ完全にベッドに縫い付けられ束縛されたままに官能を煽られて喘ぐ松山を見下ろしては、やはり余裕なぞ有ったものではなかった。
 太腿の途中まで下着とジャージを引き摺り下ろしたその状態のままで、足の付け根に手を差し入れると、そのまま下肢を身体に付くほどに折り曲げた。
 「な…ッ!?!」
 結構柔らかい松山の躰は、日向の力強い腕の施す通りに、難なくくの字の体勢にさせられてしまった。途中まで露わにされた、真っ直ぐに綺麗な筋肉の付いた下肢。しかしサッカー選手にしては細く引き締まったその大腿が、今はラインを艶やかに浮かび上がらせて日向の激情を煽っている。布団の中で自分を悶々とさせて仕方が無かった松山の脚が、今しどけなく開かれて目の前にある。
 「や…ぁッ、…あ!あ!」
 日向は堪らず白い腿に噛み付き、舌で丹念に舐った。内腿をなぞるとビクッと腰が浮き、ぱさぱさと髪を振る、乾いた音が響いてくる。そして目の端に、松山の中心がおずおずと震えながら立ち上がり始め、奥に隠された後腔が、きゅ、と収縮する様が入った。
 「……!」
 あまりに妄りがましい図に焚きつけられて、気が付けば、太腿を掴んだ腕に更に力を込めその躰をさらに倒し、双尻にむしゃぶりつくように舌を這わせていた。


 

「ひゃ…っ!ひゅ、が…ッ!!ヤダ!こんな、こんなんッ、嫌…だ!!」
 局所だけを晒して強引に施される行為の淫靡さに、松山が堪らず精一杯かぶりを打つ。涙まじりにも聞こえなくないその必死の訴えをアッサリ無視して、日向は双尻を無遠慮に開くと深まった箇所に舌を差し伸べた。
 「も…ッ、嫌だ…、や、め…、なんで…」
 「悪ィな…。もう止まんねぇよ…」
 「はぁあっ!」
 グイと差し込んだ舌先と共に、武骨な指先を体内に捩じ込むと、松山は熱い吐息を吐いた。そのまま無理やり襞を掻き分けて入らせた指先で、ごり押しの強引さで前立腺を摩擦する。
 「や!ぁああ!」
 意地の悪いほどに容赦ない手管に追い詰められて、松山はそろそろ躰が蕩けて自制が完全に効かなくなる自分を感じているようだった。嬌声が、殆ど勝手に口をついてしまうのを自制しようとして、でもどうにもならなずに甘い声を上げては唇を噛んで。そして体内に強引に侵入させた指と舌が、やはり身勝手に体内から引き抜いた時、松山の後腔は瞬間、おそらく勝手にまるで物欲しげに窄まった。
 「悪ッ…!」
 「った!ァああッ!」
 咄嗟に日向が短く叫んだかと思った次の瞬間、日向は松山
の衣服を剥ぎ取り自分のそれも脱ぎ捨てると、その剛直で深々と貫いていた。

 「っう、ぁ……ん、苦し…ッ」
 前置き無く犯され、苦悩に反射的に開かれた松山の唇から、吐息が引き絞るように吐き出された。切なげに震える不規則な呼吸の合間から、うわ言のような喘ぎ声が漏れる。微妙に甘さを含んだ、恐らく完全に痛いだけではないその声に、日向の熱は更に煽られた。何より、己自身をまるで吸い付くように包み込む熱い内側の襞の肉感にはどう抵抗しようもなかった。
 「あっ、くぅ……!」
 仰け反る腰を引き寄せ、グイと一度限界まで満たすと、腰を引き、再び狭い内壁を屹立した滾りで深く抉す。掻き分けるようにして擦り上げ、そして疼きを煽るように引き出す。繰り返される摩擦に、ただでさえ狭い内壁が窄まり、強烈な刺激が互いに走った。繋がっている箇所から湧き起こる、痛い程に過ぎる甘美が2人の境界線を溶かすようだった。
 「んっ、んぁ、…っ、あっ、あぁっ」
 昂りを打ちつける度、松山が熱に浮かされたような声を漏らす。白い肌がしっとりと艶を帯び、そのしなやかな肢体が日向の放埓な動きに揺さ振られてうねる様は、匂いたつような色香を放っていた。
 「ふぁ…っ!ぁっ、あ…っ!ひゅぅ、ひゅうがぁ…ッ」
 シーツを掴んでいた松山の指先は、求めるように宙を彷徨い、今やくの字にきつく折り曲げられ、日向の肩に爪を立てていた。切羽詰ったように名前を呼ぶ。啼いて自分を呼ぶ松山に、蕩けて自分に絡みつく内部に、日向も限界だった。
 「あっ、も、もう……ッ!」
 松山の内側が痙攣を始め、ビクビクと不規律な速さで日向自身を引き絞った。既にはち切れんばかりに撓り返っていた滾りはこの刺激に耐えよう筈も無く、脈動する深みをきつく穿ち、全てを注ぎ込んだ。
 「……ッ!」
 「あっ、ああ――ッ!」
 そして2人は同時に頂点を極める。松山の下肢がビクビクと大きく断続的に震えるのが、内股を抱え上げていた掌にダイレクトに伝わってくる。柔らかい足首がしどけなく虚脱し、裸足の長い足の指が力を失ってくったりしている様子がいたいけだった。まだ余韻で小さな痙攣のようにわななく大腿のラインを、松山自身から放たれた乳白色の蜜が逆行してトロリと伝い、無駄の無い筋肉のラインを描き出している。その凄艶さに日向は荒い息を一つ飲み込んだ。


 直ぐ思うさま口付けようと伸び上がって近付けた日向の顔を、しかし松山は脱力しながらも咄嗟に跳ね除けた。
 「松山…」
 「も…!こんなん…ッ、こんなんヤダやっぱり…ッ!」
 そして頑是無い動作で両腕をガバッと交差させて顔を覆う。
 一切を拒絶するような硬いオーラで一息の内に纏われ、取りつくしまのない松山に、流石に横暴にヤリすぎだったかと少し反省して、日向は「悪かった…」と小さく硬い声を落とした。
 「マジ悪かった…。抑えが効かなかった…」
 「ウッセ…!オマエ酷ぇ…!酷…ッ!…も、こんな風に、こんな風に……ッオレ…!」
 「…え…?」 

 ―――こんな風にされたのに、オレ。―――

 こんな風にされても感じてしまった自分が嫌だと。そう言ったのだろうか松山は。
 「も、恥ずかし…。スゲ、ヤダ……」
 「どうして」
 「だ…っ、」
 覆っている腕越しに、低く囁きかけた。
 「俺は恥ずかしい松山が見たい」
 「バ…ッ!」
 
 瞬間、交差していた腕の力が緩んだのを見逃さず、手首を掴むと顔の横に縫い付けた。案の定、目元まで真っ赤に火照らせた松山の顔と出会う。そして口元に息が掛かる程に自分も口を寄せると、松山が「変態」と小さく毒づいたのを気にせず、囁いた。
 「大体、そんな事言ったら俺なんか」
 フイ!と居たたまれなそうに顔を背け、小さくなってる松山の耳朶に低音を注ぎ込ませる。
 「ずっと、抜きたくねぇくらいだしな」
 「……!」
 その言葉に、きゅん、と未だ日向を挿れっぱなしだった松山の後腔が収縮した。
 「!……ヤッベ…」
 「ヤ、ッだ…ぁ!!」
 「…オマエなぁ…」
 収縮した途端、グンと勢いを盛り返した日向自身に、松山の背筋が撓んだ。
 「ふぁ…っ、…ぁ、あ…、も、ヤダって…」
 「嫌だって言われてもな…」
 肉襞に一つきつく包み込まれて、完全に勢いを取り戻した屹立。戸惑うように緊縮しては吸い込まれるように含まれる感触にも、もはや一気に後戻りは出来ない状態に追い込まれた。
 「今日でもうしばらく会えねぇだろ?だから…」

 ――俺とするとどんなになっちまうか、見せて?

 「ひゅう…ッ!」
 熱に浮かされて潤んだ、もの言いた気な松山の大きな瞳。扇情的なその瞳に、先に続く言葉さえ聞いているゆとりも無く、日向は律動を再開した。
 「やぁっ、…っん!」
 既に一度最深くまで穿たれ、そして放たれた熱い奔流の侵入を許している内部は驚く程に熱く蕩けて柔らかかった。柔らかいのに、絞り込まれるが如くキツイ。堪らない肉感に日向の放逸な動きは更に豪放さを極めた。結合部から生まれる粘着質な音に、堪え切れないといった風に上がる松山の声に、更に煽られる。
 「も…ォッ!変になっちまう……ッ」
 「なっちまえよ、変に」
 「ヤッ、ぁああ、あ!」
 自然自分も眉を苦しげに寄せられているに違いない。「松山…」と漏れた自分の声が思ったより掠れ、熱を含んでいた。
 松山を愛おしく思う気持ちが込み上げて、その顔を見下ろすと、松山の開かれた唇が朦朧と動き、『気持ち、い…』と形作っていたのが目に入った。
 「松、山…!」
 「くぅんッ!」
 勃然と沸点に達しそうなインパクトに、日向は半ば慌てるように松山の性器をまさぐった。握り込んで指をかけ、とろりと涙を溢れさせている鈴口を、指の腹で刺激する。
 「あ、は……っ!やぁあ…ッ!そんッ、達っちまう…ッよォ…!……あああ!」
 そうして2人、性急に追い詰め合うようにきざはしを昇り、共に極限を迎えたのだった。


 「…オカシクなっちまうオレでも、イイか?今日、は…?」
 達した後、松山の内部はずっとビクビク収縮して、達きっ放しの状態だった。それもようやっと落ち着き、抱き合って、まだこちらは整わない熱い息を切なげに震わせて、濡れた瞳を上げて松山が呟いた。
 良いも悪いも大歓迎だ。日向は不安そうに揺らめく黒い瞳を覗き込んでクスリと笑うと、キスの余韻でぷくりと紅く潤っている唇を啄ばむように口付けながら「いいぜ?」と囁いた。
 「…じゃぁ、皆が起き出してくる前まで…少しの間、……」
 「ん?」
 そして聞こえるか聞こえないかの仄かさで囁かれたその言葉に、息を飲んだ。
 「……挿れたまま…寝て…?」
 「――!!」
 危うく、『バッカヤロ!』と言ってしまいそうだったのを、間一髪ゴクリと飲み込んだ。
 目を見張った先、こんな恥ずかしい科白、相手の反応を見届けないと死ぬとばかりに、真っ直ぐ見つめ返されて。
 そして日向は、涙腺の弱い松山の瞳が目の前でまたジワリと潤うのに驚き焦って抱き締めた。その瞳の残像も、抱きすくめる躰のその抱き心地の良さも、そして先程の科白も、自分を良いように煽ってくれる…が。考えないようにするのがどんなに難儀だった事か。

 抱き合って、お互いの存在を感じて。
 シンプルな状態に、シンプルな悦びでひたひたと満たされる。
 オマエが好きだ。





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 「じゃ、な」
 「…ああ」

 今回の別れ方は、いつもとちょっと違う擽ったさを含んでいるような、そんな気がした。
 ま、こんな照れ臭いような別れ方は今回だけだろう。

 いや、もしかしたら、次回会う時も擽ったそうにしてるかもな、松山は。









End






It's automatic
側にいるだけで その目に見つめられるだけで ドキドキ止まらない 
(I don't know why)
NOとは言えない
I just can't help

It's automatic
側にいるだけで 体中が熱くなってくる ハラハラ隠せない 
(I don't know why)
息さえ出来ない
I just can't help


It's automatic
側にいるだけで 愛しいなんて思わない ただ必要なだけ
(I don't know why)
淋しいからじゃない
I just need you


 きゃああああああああ!!!実はまゆまゆ、11月の誕生日だったんですけどそのプレゼントとして滝沢かおり様よりこのような素敵な萌えバナシをいただいておりましたっ!!エロ好きなワタシの好みをよぉ〜〜くわかってくださってる、かおりさんっ!!!もう何十回となく一人で楽しませていただいておりましたvvvあ〜ん、日向さんかわってくれい!!!というくらい、松山君に対してむらむら〜〜〜〜〜〜っとくる光景が鮮烈に浮かびます!!
 もう、嬉しくて嬉しくてたまりませんっ!!!
 そして、ココまで読んで下さってる皆さん、画像重くてすいませんでした;;
 実は、私、かねてより、というかかおりさんのサイトができてすぐより、「かおりさんの裏小説に挿し絵書きたぃ!!」というのが夢でして・・・。今回、思いがけずいただいてしまったこのお話に、挿し絵をつけずにはいられませんでしたvvvと、いうわけで、いっぱい描いてしまいました・・・・。選べなくてこんなにいっぱい(爆)。
 かおりさんファンの皆様、イメージぶちこわしですいません!!!
 でも、ホントに夢だったんで、今回だけはかんべんしてください〜〜〜〜;;

 ああ、ほんとに嬉しい!!感動!!そして萌え〜〜〜〜〜〜っ!!!
 何度読んでもいいですvvv
 かおりさん、ありがとうございましたぁ〜〜〜〜〜(号泣)。(03.01.08)