バスタブの中、白い裸体がぐったりと横たわっていた。
ドロドロに疲れきった松山が、ようやくといった状態で服を脱ぎ、温かいお湯の中にざぶりとつかったところだった。
ふんわりとラベンダーの香りが漂う。リラックス効果のあるアロマオイルが数滴たらされたお湯は、松山の張り詰めた筋肉をやさしくほぐしていってくれる。
「はぁ・・・きもちいい・・・」
全日本の一員として海外合宿にきている。
欧州チームとの練習試合をこなし、ハードな練習をおこないながらコンディションを保っていかなければならない。
しかし、練習中毒ともいえる松山は、それでもなお、一人夜中にサッカーボールを持ち出し自主練習をしていたところだった。そうすることで、彼は自分の精神を保っているともいえた。
集中して2時間。もはや時計は1時を指していた。
宿舎のホテルに戻ると同室の三杉はまだ起きていた。
なにやら、本でも読んでいたようだ。ドアの開く音に気付いた三杉は、ぱたりと手元の本を閉じると、振り向きながら松山を迎えた。
「おかえり、松山」
「起きてたのか?さきに寝ててもよかったのに」
「いや、なんか眠れなくてね。そろそろ松山も戻ってくる頃だと思ったし。そうそう、バス、お湯張っておいたから。先に使いたまえ。僕はまた寝る直前にシャワーを使わせてもらうから」
「そうか?悪いな。気を使わせちまって。お言葉に甘えて先にはいるわ」
正直、松山もシャワーも浴びる元気がなかったので、バスタブに浸かれるのはありがたい。
やはり、日本人。シャワーよりも湯舟でゆったりが一番なんである。
自宅からもってきたラベンダーのアロマオイルをトランクからとりだし、松山はバスルームへと向かった。
今までなんだか恥ずかしくて使っていなかったのだが、今夜は疲れがピークにきている。
明日の練習にはでられるように、ここで疲れをとっておく必要がある。
ぼうっとしていて気づかなかったのだが、いつのまにか三杉がとなりのシャワーブースで湯を浴びていた。
このホテルのバスルームは、シャワーとバスタブが独立しており、使い勝手のよいものとなっていた。以前の遠征などよりも格段にレベルの高いホテルに宿泊できるようになっているのは、ひとえに彼等全日本の実力がものをいっていることもあるだろう。
どんなボロい宿舎であれ、雨露がしのげれば十分とは思っていたが、やはり施設の充実しているところで休める方が、その分サッカーに打ち込めると気付いたのは、ようやく最近のことだ。
そんなことを回転の遅くなった頭で考えながら、松山は相変わらずバスタブの中に横たわっていた。
「・・・・・やべえ・・・すっげ・・え・・・眠い・・・・」
気が付くと、目蓋が開かない。どうやら眠っているらしい、ということを断片的にかろうじて起きている頭で思った。
「松山、寝てるのかい?そんなところで寝たらダメだろう」
三杉の声が遠くできこえる。それに対して、いまでるから、と返事をしたつもりだったが、それは声にはなっていなかったらしい。
「・・・・あ・・・・う」
「まったく・・・・世話がやけるね、君は」
三杉は、体を拭いていたバスタオルを棚に戻すと、ざぶりと松山の眠るバスタブにはいってきた。
二人分の体積で、お湯が溢れる。
「・・・・も・・・でるから・・・・」
松山は、ようやくそろそろと、体を起こそうとしたが、今度はしっかりと横たわった三杉にその腕をつかまれ、三杉の体にかぶさるように倒れこんだ。
「ご・・・め・・」
それでも目蓋も足も手も重くて動かない。眠くて眠くてしょうがない。
三杉はそんな松山の体をしっかりと抱きしめた。
「松山・・・そんなに眠いのかい?」
「んっ・・・・・眠く・・・ない・・・おき・・る」
口ではそういいながらも、お湯の温かさとはまた違った、三杉の体の腕の中の温かさに、ついついそのままの状態で身を任せていた。
(あ〜、ここで眠っちゃいたいよな・・・・)
三杉はため息をつくと、松山を抱え直す。
「ほんとに君は無防備すぎるよ。僕がなんにもしないとでも思っているんだろうね」
松山は三杉のその声を、ぼんやりとききながら、何言ってるんだ?といいたげに重い目蓋をうっすらと開いた。
「ここまで煽られっぱなしで、流石に僕もこのままっていうわけにはいかないんだよ松山」
耳元に唇を寄せ、熱く呟かれる。
その低い声と、吹き掛けられた息に松山の体がびくん、と跳ねた。
「み、三杉?なにいって・・んんぅっ───」
疑問の言葉を最後まで言わないうちに、松山の言葉は三杉の唇に飲み込まれてしまった。
貪るようにキスされる。
呼吸さえも苦しくて開いたところから、歯列を割って三杉の舌が松山の口腔へ侵入する。
訳の分からぬまま、松山の舌は三杉に捕らえられ甘く強く蹂躙される。
すっかり松山の眠気はふっとび、かわりに白いもやもやとしたもので頭の中がいっぱいになる。
なんで、なんで?俺、三杉になにされてんの?
しかし、体はしっかりと抱えられ逃げることもできない。
舌を吸われるたび、躯の細胞がひとつづつ麻痺したようになっていくのが感じられた。
ようやく離された松山の唇からは、溢れ出た涎がつうっと一筋バスタブに落ちる。
三杉はそんな松山をねっとりと視線で嘗め回す。
松山のあくまでも病的ではない、健康的な肌の白さがお湯と今のキスのせいでほのかに桜色に染まっている。
そうして三杉の上にうつぶせになるような姿の松山の双丘が、ぷかりと水面に浮かび上がり、なんともいえない艶を放っている。
「お、おまえっ、なにすんだよ!!!」
全身を真っ赤にして、松山が潤んだ瞳できっと睨んだ。
「今まで我慢してきたんだから、これくらいいいだろう?」
「がっ、我慢ってなんだよっ!」
「じゃあ、君はなんなんだい?さっき僕に抱かれても逃げなかったろう?」
「べ、べつに風呂いっしょにはいるくらい・・・普通じゃんかっ・・・だってだって眠くて・・・」
「君は眠いと、誰にでもあんな姿をみせるのか。それこそ自分から誘っているのと同じじゃないか。君は自分の魅力っていうものに全然気が付いていないんだね」
だってだってココはたまたま部屋に風呂あるけど、ほかんとこだったら大浴場で・・・。みんな一緒にはいるし。背中ながしっこしたり、筋肉くらべたりそんなの当たり前じゃねーかっ!
そんな松山の想いは、また三杉の唇に塞がれて声にはならなかった。
しかも今度は体ごと入れ替えられ、三杉が被いかぶさるような形になりますます逃げることは不可能となった。
びくんっ、と松山の体が魚のように大きく湯の中で跳ねた。
三杉の右手が胸のまん中に色付く乳首をぎゅっと摘んだり、こねまわしている。
や・・・そんなところ、さわられたことねえっ・・・・くすっぐたい・・・・
「はっ・・・あ・・ん」
いつのまにか自由になった口から、吐息がこぼれる。思い掛けない自分の甘い声に、松山が驚いて目を見開く。
「やっ、お・・俺っ!」
「僕が気持ちよくしてあげるから」
「そんな・・・ん、いらね・・・えっ・・・んっ」
三杉は首筋にちろちろと舌を這わせながら、執拗に胸を攻める。
与えられるその初めての感覚に、松山はすっかり翻弄されていた。触れられた場所が熱く疼いてたまらない。
だしたくないのに、口からは声が漏れてしまう。
腕は自分の体の下に組みこまれてしまい、その口を塞ぐこともできない。松山は必死に喘ぎを飲み込もうとする。
自分の愛撫で松山の体がピクピクと引きつるように震えるのを、三杉は満足げにみつめた。
「かわいいね。松山。こんなことくらいで、そんなに感じてるの?ほら、ココ、こんなに固くなって。まるで僕に舐めてっていってるみたいだ」
そういいながら、飽きもせず胸の突起をひとつまみする。
「んなこと・・・ねえっ・・・」
なおも、気丈に文句を言う松山だったが、三杉の手が下半身に伸びるとそれは悲鳴にかわった。
「あっ!!!」
先程からの上半身の愛撫で、松山の性器はゆっくりと形を変え始めているのを三杉は気付いていた。それを優しく握っただけで松山の体は強張った。
「松山はココも可愛いね・・・・・」
三杉が耳元で囁きながら、松山のそこを丁寧に弄んだ。手のひらで上下に緩急つけながら擦られるたびに松山のモノは大きくなり、己を主張していく。
「あっ・・・あ、・・・・・んんっ・・・ふ」
必死に声を我慢しようとしている松山の目には、いつのまにか涙が溢れていた。化粧でもしたように綺麗に紅潮した頬のうえを、涙の雫が何滴もこぼれ落ちていく。
与えられる快感に全身が昂り、頭の中が蕩けていく。たまにする自慰で感じるのとは全く違う。信じたくは無いが、甘く気持ちがいい。
熱を帯び、解き放たれるのを待つその場所から三杉の手が離れる。
「はぁ・・・はぁ・・・・」
涙目で大きく呼吸をする松山を見下ろすように、ざぶりとバスタブから三杉が立ち上がった。
「ここじゃ狭いから、続きはベッドでね。さあ、一緒にきたまえ」
「や・・・もぉ、こんなん・・やだよ・・・。バカ三杉・・・っ」
「じゃあ、自分で続きをやるかい?そんなに大きくしてるくせに」
恥ずかしい自分の姿を意地悪く指摘され、屈辱に眉をひそめながら松山は身を捩り、三杉に背を向けるようにした。
松山と三杉では、そんなに体格は違わない。三杉としては、松山を抱えてベットに連れていければいいのだが、流石にそれは無理とわかっている。
限界の近い松山を引きずって行くことも考えたが、逆にこのままだとどうなるのかという悪戯心がもたげたのだ。
恥ずかしさで体を赤くし、達する直前でとめられた快感を塞き止められ、わなないている松山の背中をみつめ続ける。
松山は、そんな三杉の視線を痛いほど感じ、さらに熱が増していく自分のあさましい姿に絶望していた。
このままでは、イクこともできず三杉にも見つめられたままで逃げ場がない。
あきらめたように、松山の手がそろそろと動き、自分の昂ったモノを扱き始めた。
これ以上、三杉に翻弄されるのは堪え難かった。男の手でイカされるなんてどうしたって、松山の中では認められないことだった。
「はぁあん、くぅ・・・・・・んっ」
不器用に湯の中で松山の手が上下する。目を伏せ、三杉の視線を避けるようにその行為は続けられた。
せつなげにもれる声と、伏せられた睫にたまる涙、快感を追う歪んだ表情は、三杉の想像以上に色っぽいものだった。
じゃぶじゃぶと水しぶきが激しくあがり、松山の右手の動きが早くなる。
「はぁ・・・・・・・・・っ!!」
大きな痙攣をし、ようやく松山が果てた。どくどくと先端からは白濁した体液が放出された。湯の中に白い帯となってゆらゆらと漂っている。
はあはあと肩で大きな息をしながら、バスタブに仰向けに横たわるように体を預けた。
「ごめんね。松山・・・・ここまでさせるつもりはなかったんだけどね」
三杉がちゅっと、松山にキスをした。
「・・・はやくお前もだしちまえ!」
ちらっと三杉をみやった松山が、真っ赤な顔で、吐き捨てるようにいった。
その視線の先には、天を仰ぐようにそそりたった三杉のモノがあった。
なんで、コイツこんなんなってるのに平気な顔してんだよ!
松山の頭の中をまるで透視したかのように三杉が呟く。
「そりゃあ、松山としたいからだよ。だけど君に嫌われるのはやだからね。納得してもらってしたいから耐えてるのさ」
「・・・んだよ。三杉も俺みたいに勝手にやれよ!」
「ほんとは、僕がイカせてあげたかったんだけどね」
「!!!!だって俺達男同志だろ?おかしいよ!」
「男同志でもセックスはできるよ。男女じゃ無くてはならないなんて、決まりがあるのかい?それに途中まで松山も気持ちよかったろう?」
「!」
それに対して否定もできず、松山は唇を噛み締めた。
「ねえ、松山。松山は僕のこと嫌いかい?」
「え?そんなことねえよ・・・」
「じゃあ、いいよね?」
「・・・・・いいって、なにが・・・」
「僕は、昔から君が大好きだよ。君を抱きたくて仕方がなかった。君が僕を嫌いでないならせめて、君を確かめさせてくれてもいいだろう?別に恋人になってくれとは言わないし」
「そういういいかたって・・・」
「セックスは別に恋人同志じゃなくてもできるんだから。今、ここに一緒に生きてるっていう確認作業なんだよ」
なんだか、三杉にとうとうと語られると、そういうもんかなと思ってしまうところが恐い。松山も御多分にもれず、三杉の弁に洗脳されてしまった。
わけのわからないうちに、手をとられバスルームからベッドルームへ移動し、ベッドに押し倒されていた。
先程は手だけでいじり回された胸の突起に、三杉の赤い舌が這いずり回る。
「はぁ・・・ん、みす・・・ぎっ!・・・やっぱ・・・おかしいよ・・・・っ!」
「もう、往生際が悪いね松山。もっと素直になりたまえ。気持ちいいだろう?」
舌はゆっくりと下半身へとさがりながら、松山を追い詰めていく。
松山の体は、さっきからびくびくと跳ねまくりで、三杉は楽しくてしかたがない。
「さてと・・・そろそろ」
松山をくるりと反転させ、うつぶせにすると、まっしろな双丘をぐっと掴んだ。
ぬるりとした感触が、誰にもみせたことのない奥へ与えられる。
「な、なに?」
「痛く無いようにするからね。」
そのままじゅぶっと三杉の指が、松山の入り口を抉った。
「あうううっ!」
「しっかり慣らさないと、大変だからね。ちょっと我慢して」
「い、痛いっ!あああっ!!」
三杉は松山の前に手を回すと、萎えかけた松山の性器に刺激を与える。次第にソレは形を変え始めていった。
はじめは一本だった指も、二本、三本と遠慮なく増えては、蕾に侵入し抜き差しをくり返した。
「ああんっ・・・あっ・・・・はあんっぅ」
ぼろぼろと涙を流す松山の背中に、キスを降らせる。
可愛い松山。だからこそ征服したい。
三杉は一気に松山を貫いた。
翌日、妙に腰をかばう動きの松山は自主練習を初めて休み、みょーに色つやのよい三杉の姿がありましたとさ。
はじめての裏作品がコレだなんて・・・・・・・・・・っ!さいてーっ(涙)。(01.04.30)
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