スキンシップ♪

 
 

 スキンシップと、いわゆる邪な気持ちがはいって触れることの違い。
 朝から、堂々回りにぐるぐるしている日向が、松山と距離をおいて突っ立っているここは全日本合宿の練習グラウンドの中である。

 松山は、あーいうヤツなんで、仲間と認めてるやつらにはかなりフレンドリーだ。わかってるんだけど。だけどさ。
 ほら、今だって石崎の肩をそんなに気安く叩いて・・・。
「まっつやま〜、おっは〜!!」
 翼が今日も元気にノウテンキな挨拶をかましながら、松山に抱きつく。松山も腕を広げて抱きとめる。その松山の屈託のない笑顔には、へんな想いはないワケで・・・。
 そんなふうに穿ってしまう俺がおかしいのはわかってはいるがっ。
 
 でもっ、翼には、翼には絶対ありやがる!!!!
 ガンつけていた俺の視線に気付いた、翼だけがこちらを振り向く。そして、くすり、と笑いやがッた!もちろん松山と抱擁したままで!!

 ひとり、マグマ対流の活発になった日向をよそに、松山と全日本メンバーの朝の交歓は続いていく。
 
「まつやまさーん!!!!」
 見事な和音に、顔をあげると今度は、葵、新田、佐野、そしてタケシまでが一緒になって、松山にまとわりついている。
「おう、おはよう!お前ら今日も元気だな。お、タケシ、またちょっと背のびたな。新田は洗濯物ためてねーか?ちゃんとだしとけよ、佐野、昨日のフォーメーション復習したか?葵、はしゃぎすぎてないでちゃんと睡眠とってるか?」
 いつものことながら、松山はホントに周りをよくみている。そして、おしつけがましくないくらいの、世話好きな面が焼かれる方にも心地よくて。そんなところが後輩、同輩を問わず好かれるのは分かる。
 分かるが・・・・あいつらの、へらへらした態度はなんなんだ!?
「松山さん・・俺、最近寝付きがよくなくて。練習終わったら相談のってもらいたいんすけど・・・。」
「そうなのか?俺でよければ話きいてやるよ」
「ありがとうございます!(にやり)」
 新田。
 お前、昨日テレビ室で眠りこけて、早田に引きずられて部屋に戻ってたろーがっ!あれの何処が寝付きが悪いっていうんじゃ〜!!
 それはそうと、タケシ、お前までなんで松山にまとわりついてるんだ。頭まで撫でられて!俺だって撫でられたことないのに!!(←それはないだろう・・・)
 日向の危ないオーラを感じたタケシが、恐る恐る日向の方にやってくる。
 日向は、できるだけの笑顔でタケシにおいでおいでをした。
「ひ、ひゅうがさん?おはよーございます・・・」
「おはよう、タケシ。」
 こ、こわい!!!タケシは心底そう想った。
 日向自身は笑顔と思っているらしいが、傍から見るその張り付いた笑顔は般若そのものなんである。つき合いの長いタケシですら、思わず身を竦める。
「松山にずいぶん甘えてんな。おまえ」
 松山、という言葉に正気を取り戻したタケシが饒舌に喋り始める。
「優しーんですよね。松山さん。年下の僕にまで『気をつかわなくていいぞ』とかって言いながら、自分はいろいろ気をつかってくれるし。世話やいてくれるんですよねー。他の先輩のみなさんとなんか違って。もちろんみなさんも優しーんですけど。松山さんのはほんとほっとするっていうかー。MFとしても尊敬してますし」
「甘える?」
「でも、一番夢中になってるのは、新田さんかな〜。松山さんの隠し撮り写真とかもってるんですよ(笑)」
「写真?」
 日向の顔はさらに般若度30%増しになっているのだが、松山を語るタケシは気付かない。
「あ、ポジション別練習はじまるんで、もういきますねっ」

 
 日向火山のマグマは噴火寸前にまで煮えたぎっている。
 しかし、なんに対して爆発していいのかわからないという事実が、よけいに日向をやきもきさせる。
「小次郎、松山におはようっていった?」
 気付くと岬が横に立っていた。
「・・・まだ」
「挨拶できないやつは嫌い、ってこの前いってたよ」
「・・・・・」
「松山はねえ、自分の言葉よりもからだを触れあって思いを伝える方に重きをおいてるんだよね。コミュニケーションには。」
「なんで」
「ほら、松山のうちって動物いっぱいかってるじゃん。おとーさんにそう育てられたらしいよ。体で話せって。ムツゴロウさんちみたいだよね。そういうこと正気で言っちゃうところが可愛いんだけどね。だから、全然へんな気もないんだよねー、ああいうのも」
 岬が指差した先には、今回遅れて参加した三杉が松山に・・・・・・・!!!!


「おはよう、松山」
「三杉、おはよう!」
 優雅に微笑みながら三杉は、ふわりと松山を抱擁すると、その頬にキスをした。
「外国風の挨拶」
「そーいや、昨日の映画でやってたなー」
 松山はのほほんと応える。流石に、周りの集は一瞬フリーズしたものの、当の松山の天然さに「しょうがないな〜松山は」と苦笑しているだけであった。
 そう、抱擁もキスも挨拶だと思えば、なんともないんである。ふつーのひとには。それが常識。
 しかし、それが許せない男がここにひとり。

 三杉〜!ぶっ殺す!

「小次郎、あれくらいふつーなんだよ。僕もフランスでは毎日やってたしね。まあ、今日は三杉くんにとられちゃったから松山にはやめとくけどー。とりあえず、小次郎もおはようぐらいは、松山にいってきたら?一日のはじまりだし」
 そうだ。俺だって松山と。松山だって俺とのスキンシップを待ってるはずだ!
 こんなとこで阿呆なやつらのことをうだうだ考えてる場合じゃねえ!

 ちょうど、ひとりになった松山をめがけて日向は走る。全力疾走で。

「松山ー!!!!!!!!!!!!!!」
「な、な、なんだ????」

どどどどどおおおおおおおお

「おは・・・・・うっ・・・ぐほっ・・・!!」
 日向小次郎、朝の挨拶の言葉は最後まで言わしてもらえなかった。
 松山の手加減無しのラリアートが見事にはいった・・・・。
「あ、わりい。しっかし、お前も朝から喧嘩ふっかけてくるなんて元気だなー。ま、今日も一日がんばろーぜ」
 倒れた日向の肩に、ぽんぽんと松山の手がおかれる。


 あ、スキンシップだぁ・・・・って・・・・そうじゃなくて(涙)。俺って・・・・・。
 
 日向の片思いはまだまだつづきそうである。



 なぐり書き。しかも仕事場で(笑)。いいんだろうか。
 だから、リライトもしてない。思いつきのまま。ちょっぴり総受けっぽいかも。
 ほんとは松山、日向にだけは照れてどついちゃうんだよね、っていう設定ありなんですが、そこまでかけませんでした。また続きでるかも。