デザートを召し上がれ

 
 


                                 



「日向は料理が上手い。これは大方の知る事実である。
 松山は料理が下手。これも大方の知る事実であるが、もう一つ、皆の気付いていないことがある。
 松山は料理が好き。
 好きこそ物の上手なれとはいいつつも、例外は有る。松山は料理をする事が大好きだったが、味の方がイマイチ・・・だったのだ。
 しかし、ココは凝り性、練習有るのみの男、松山光。とうとう飲食店レベルの味を生み出す事に成功した。
 本を片手にキッチンに閉じこもること6時間。出来上がった料理の数々は、それまで実験台となってきた日向をも唸らせるものだった。
「・・・旨い」
「だろ♪もー、この写真みてぜってー旨いって思ったモン!やっぱ書いてある通りに作ればちゃんと出来上がるんだな!今日やっとわかったぜ。あ、まじ旨いなコレ。俺ってばすごいじゃん」
 松山が目の前に並んだ料理と同じ写真が載っている、レシピ本を眺めながら嬉しそうに笑った。
「ちょっと待て!今日わかったって・・・。今までのあの・・・料理は自己流だったのか?」
「ん〜旨いはずだったんだけどなぁ。俺の考えでは」
 日向は思わず頭を抱えた。そんなものを俺は食わされてきてたのか?まあ、松山がキッチンに立つことはしょっちゅうではなかったが。突然何かに憑かれたように料理をし始めることが今までに何度か。毎回食卓に並べられたものは、いかんともしがたいものばかりだった・・・。
 それにしてもアレはどうするつもりなんだろうと、ため息をこぼしながら先程まで松山が篭っていたその場所をちらりと日向は見る。キッチンに台風でも直撃したんじゃないかというくらい、そこは凄い状態になっている。
 ちなみに松山は、片づけは大嫌い、これもまた周知の事実である。というよりも苦手と表現した方がいいのかもしれない。むしろやらせない方が周りのためにもなる。皿を洗えば何枚かはゴミ箱行きだったし。
 並べられた松山の手料理を、全て医の中に片付けた日向は、空いた皿を器用に積み上げると片手でひょいと持ち上げ、流し台へと運んだ。ぶつぶつ文句をいいながらも、その後ろ姿は嬉しそうに見えた。
 松山の料理好きは「誰かに食べさせたい」というこの欲求の行き着く所だったからだ。自分で食べたいのだったら、もっと早くにその腕は上達していたに違い無い。
 この場合の「誰か」は、一緒に暮らしている現在は「日向小次郎」に限定される。しょっちゅう顔を合わせる反町や若島津には別に食べさせたいという欲求はないらしい。
 以前に二人が遊びにきた際に、キッチンに無造作にかけられていた松山のエプロンを見つけた反町がいった。この時はいつものように日向がキッチンに立っていたから、その使われていないエプロンは松山のモノというわけで。
「松山も料理するの?」
「するよ。俺、料理好きだもん」
「へー、じゃあなんか作ってよ」
「日向にだけで十分だよ」
「何それー。いいじゃん、俺も食べたい〜」
「やぁだよ」
 そんな二人の会話を聞いた日向は、鍋の中身を掻き回しながらニヤニヤと笑った。
 
 めちゃくちゃに散らかり荒れていた台所を、ようやく綺麗に片付け終えた日向はお茶の入ったカップと、松山が今日のデザートと言って買ってきてあったケーキの入った箱を手にリビングに戻った。
「おい、コレも食うんだろデザート・・・」
 しかし、それには返事はなく、松山は床に寝転んでうとうとと居眠りをしていた。
 一生懸命作って、結構な量になっていたのを日向と二人めいいっぱい食べて、ちょっと疲れてしまったらしい。
 まあ、かなり頑張ってたからな・・・でも・・・。
 日向は暫くじーっと松山を眺めていたが、ふと悪戯を思い付き行動を開始した。
 ケーキの箱を開けると、そこにはオーソドックスな苺のショートケーキ。しかも不二屋のヤツ。松山はコレが好きなのだ。いわゆる流行りのパティシエがつくる芸術的なケーキは苦手らしい。まあ、日向も同じだったが。
 日向はおもむろに生クリームを人さし指に掬い取ると、それをくーくーと寝息を立てている松山のほっぺたや鼻の頭にちょうんちょんとくっつけていく。
 それでもなお起きる気配のない松山に、日向は更に大胆になり、鼻の頭に置いた生クリームをペロリと舐めた。
 流石にそれには、くすぐったく感じたのか松山が気付き、身じろぎした。
「・・・んぁ?ひゅうがなにしてんだよ・・・」
「ん?デザート食ってんの」
「でざーと?あ、そうだケーキ・・・」
「もう食ってる、旨いぜ・・・?」
 日向は覚醒し起き上がろうとする松山に遠慮なく、ぺろぺろと生クリームを舐めていく。すっかり舐めとってしまうと更に新しいクリームを指先につけ、耳たぶにちょんと置いた。そして、むしゃぶりつくように松山の耳を口に含む。
 音を感じる一番近い所でくちゃくちゃといやらしい音を立てられる。日向の奔放な舌先は尖って耳の穴にまで侵入した。
「何言ってん・・・んっ!」
 思わずびくりと松山の体に震えが走る。その反応に日向は満足そうに顔をあげると、やぶから棒の耳の攻めに半分腰砕けになっている松山の耳元に更に囁いた。
「お前も食べるだろ?」
 そして、また新しく指先に掬い取った生クリームを、松山の口元に差し出す。
 松山の目元には瞬間、ぱあっと朱が走る。しかし唇はゆっくりと開かれ可愛い真っ赤な舌がちろりと日向の指の前に突き出される。そうして意を決したように、ぺろぺろと差し出された指を舐め始めた。すぐに舐め終わると、口に含んだまま上目遣いに見上げられ、日向の行動は更にエスカレートする。
 日向は松山のシャツに手をかけて首元まで捲りあげると、乳首や臍といったこれまでの情事で開発してきた松山の感じやすい場所に、生クリームを置いていく。その先を理解したらしい松山が、焦ったように怒鳴る。
「・・・く、食い物粗末にすんな・・・よっ!」
「だから全部食ってるじゃん」
「やっ・・・はぁっ・・・!」
「おっと、こっちにもクリームが・・・ココも舐めなきゃなぁ?」
 びちゃびちゃとわざと大きな音をたてて、日向は舐めていく。
 いろんなところにクリームを置かれてしまった松山は、フローリングの床に爪を立てて、必死に体の震えを支えていた。
 普段舐められることのない、臍まで丁寧に舐められる。こそばゆい感覚に腰が揺れそうになるのを必死に耐える。
「・・・っ、んなトコ舐めんな・・・よっ・・・甘いモノ、嫌いじゃなかったのかよぉ・・・っ」
「お前だけは別。松山はいつも甘いからな、もう慣れちまった・・・今日は格別だけどな♪」
「・・・やっ!ソコ・・・も、もうっ・・・変になっちまう・・・・って!」
 日向の舌先が白い肌の上で踊る度、ビクビクと身を震わせて反応する松山は、もう耐えられないというように制止の言葉を紡ぎながらも合間には快感を滲ませた吐息を漏らす。目許にはうっすらと涙の膜も張っていた。
「ホント、感じやすいんだなお前のカラダ。やらしーな・・・ココはどうだ?」
「ひゃっ・・ぁあんっ!」 
 日向は楽しそうに焦らし続ける。
「すっげえ旨い・・・松山・・・・っ」
「あっ・・・はぁ・・・・・っ!」
 殆どくまなく舐め回し、美味しい松山の体を堪能する日向だった。肘や脇腹といったところまで舐められて、松山の肌のさざ波は止まる事がなかった。
 ショートパンツごと下着を脱がされ、松山の熱くなった中心部が空気に曝された。そこを日向に直視されているのに気付いた松山が今更ながらも恥じらい膝を寄せ、日向の視線を遮ろうとする。
 そんな松山の抵抗はやすやすと日向の腕に崩され、大きく両足を広げさせられた。
「やだ・・・・っ」
「いいじゃねえか、恥ずかしい事なんかねえよ。だって俺だぜ?」
「日向だから・・・恥ずかし・・んだよ」
「松山・・・可愛いな」
 何度となく体を重ねているのに相変わらず初々しい態度を見せる松山に、日向は満足げにキスをする。
 そして日向はすっかり存在を主張していた松山の股間には、わざと触れないようにそのまわりばかりをちろちろと舐め始めた。
「コレで終わりだな・・・」
 最後に残っていた生クリームの固まりを指に掬い取り、松山の目の前にかざした。
 松山は、ようやく待ちかねたソコへつけられることを期待して、体を堅くする。
 しかし日向はクリームのついていない方の手で松山の右手を掴むと、その手のひらにクリームの固まりを置いた。
「・・・ひゅう・・・がっ?」
 最後だといわれ次こそとうとう、昂ってしまってる己のカタイ敏感なところを舐めてくれると思っていた松山は、ふいに自分の手におかれた生クリームに驚き日向を見上げた。驚き顔の松山の目を優しく覗き込んだ日向がとんでもないことを言った。
「一番美味しいトコ・・・松山が教えて?」
「えっ・・・?」
「ドコ・・・舐めたら旨いの?」
「そ・・・そんなのっ・・・わかってる・・・クセに・・・」
「クリーム付けて教えてくんなきゃわかんねえな」
「いじわ・・・るっ!ばか日向っ!・・・・もぉ・・・・っ」
 松山は半ベソになりながらも、昂りをどうにかしてほしいという欲求には勝てなかったのか、半ば自棄ぎみにゆっくりと手を伸ばして、自分の天に向かって伸びている先端にそうっと生クリームをつけた。
「・・・んっ・・・はぁ・・・・」
 その自分の行為にすら、松山はぶるぶると感じてしまう。でもコレでやっと日向が俺のを舐めてくれる―――そんな松山の期待はすぐに日向の言葉に打ち消された。
「・・・ソコだけでいいのか?松山の旨いトコそこだけじゃねえだろ?」
「も・・・ぅ・・・ばか・・・っ。ココ・・・だっていってる!早くしてくれよぉ・・・っ」
 うるうると甘い声で松山がねだる。しかし言ってる事と手の動きは連動しない。先を促す日向の目の前で、松山の白い指はおずおずと、先端から茎に向けて生クリームを広げていこうとする。自分で主張しない限り、日向は進めてくれないと諦めたからだ。更に指はその向こう、日向の目指すその奥まった場所に辿っていく。
 一方の日向は、自分で促したに関わらず、松山の素直で大胆な行動を間近に見せつけられ、堪えきれなくなってしまった。
 松山の指がそろそろとクリームを置いていくソバから、自分の舌で後を辿っていった。
「・・・はぁ・・・んっあ・・やぁ・・・っ」
「美味いぜ、松山」
 そして最後の一嘗めだけを残しておき、顔を上げた。
「やっぱ、最後はココだよな?」
 残っていた生クリームを舌先で掬い取ると、松山の脚を掴み上げ自分の両肩に担ぎ上げた。両手で松山の柔らかいお尻の肉をぐいっと広げると、ふるふると震えるその蕾へと舌先を運んだ。
 疼き始めてどうしようもなかった後孔に、ひんやりとした感触を感じて、思わず松山の体が引きつる。冷たさは一瞬ですぐにソコは熱を帯びる。
「・・・ぅぁ!」
 日向は舌先でクリームを窄まったソコに広げながら、襞の一つ一つを丹念に舐めては解していく。そして、つんつんと舌先を穴に差し込むと、ぐぐっと尖らせて更に中へと埋め込み壁を突こうとする。
「はぁ・・・・!ひゅうがっ・・・!!」
「・・・俺だけ食ってないで、松山にも旨いモン食わしてやらないとな・・・」
「あんっ」
 舌を引き抜いた日向は、すっかり昂った自分自身を寸前まで顔を埋めていたソコに宛てがう。松山の後孔がビクビクと震える。
「ココは俺、食いたいって言ってるぜ?」
「―――ぁあ!」
 ぐぐっと灼熱を押し込まれ、松山は思わず息を飲み込んだ。すぐにはじまった激しい抽挿に、体を揺さぶられる。自分の中を日向の屹立にめちゃくちゃに擦られる。
 待っていた日向の肉棒をもう離さないと言うように、無意識に締め付けてしまう。そうすると抜き差しされる摩擦感がより増し、松山を快感の淵へ沈みこませていく。後ろからナカの前立腺を刺激されると、松山の屹立も更にどくどくと震え、射精を促されていくのだ。
「・・・すっげえ食い付いてる・・・俺、そんなに旨い?」
「はっ・・・あっ・・・、はぁん、あ、あっ、ああ!!」
「・・・ベリー食うの忘れてた」
 日向はそう言うと、上半身を折り曲げ、松山の胸の小さな赤い果実を齧った。
「いたっ・・・!ああ・・・・っ!」
「ココ・・・嫌い?」
「・・・すき・・・」
「だろ?」
 れろれろと舌先で乳首を転がされ、更に快感を刺激される。つま先から脳天まで走り抜けていく痺れに、松山の後孔は日向を締め付け絞り上げる。
「ああっ・・・あっ松山すげえよ・・・」
 日向も堪えられないように快感を滲ませた低い声で喘ぐ。
 上も下も攻められて、松山はもうどうにかなってしまいそうだった。ただ、日向にしがみつく事しかできなくて。必死に日向の汗ばんだ体に手を伸ばす。
「美味いな」
「やぁっ・・・ぁああ・・・・・はぁ・・・・・!!」
 ビクビクと松山の体は跳ね上がった。その度に日向をより強く締め上げ続け、日向を殊更喜ばせた。
「・・・・っ、松山・・・んな、がっつくなよ。コレから最高のモノ食わしてやるから・・・」
 そう言って胸先から唇を離すと、松山の腰をしっかりと掴み上げ、一気に突き上げ始めた。
「・・・・ぁああああああ―――っ!」
「ああ・・・ああ!」
 日向ももう何も考えられないかのように、ひたすら松山に抽挿をくり返す。いやらしい音が止まらない。
「んんん―――!!やぁ、はあ!ああんっ」
「まつやま・・・っ」
「もっ!でちゃうぅ・・俺っ・・・・いっちまうっ!!」
 切羽詰まった松山の声に、日向は右手を松山の屹立に絡めると、上下に強く擦り上げた。
「ああ―――!」
 松山の腹が大きくへこむと、瞬間日向の手のナカのモノが大きく震え、た。促すように日向は指先で亀頭を摩擦する。 
 日向のとっておきのものを下のお口に食べさせられたままの松山は、その刺激に白い精液を放出した。日向も間をおかずに松山の中に注ぎ込んだ。
 互いに頂点を極め、ぐったりと日向が松山に覆いかぶさる。はぁはぁと荒い息の元、松山の耳元に甘い声でそっと囁いた。
「ごちそうさま」
 このデザートはどんなフルコースよりも旨いよなと、日向は思った。
「もっ・・・なんだよ・・・」
「松山も旨かったろ?俺」
「・・・・・ふん、まずくはなかったよっ!」
 ぷうと唇を尖らせる松山に、ちゅっと日向は口付けた。
「こーゆーのたまにはいいだろ?」
「・・・・・まあな」
 満足げに日向は笑う。あまりにも満面の笑みなので、思わず松山も吊られて笑ってしまった。まあ、えっちは嫌いじゃ無いし・・・。しかし日向のヤツ、ほんといろいろ考え付くよな全く!
 生クリームでべたべたした体を洗うため、日向は松山を立たせた。
「風呂はいんねえと」
「ほんとべとべとじゃねえか」
「このままだと蟻とかよってきちまいそうだもんな。それもくすぐったくて松山には気持ちよかったりして?」
「バカやろう!!んなわけねーだろ!!あー、もうつきあいきれねー!!日向一人で変態極めてろ!」
「冗談にきまってんだろ。蟻に舐めさせねえよ。甘いお前食っていいのは俺だけだ―――」
 しっしっと片手で日向を追い払い、さっさと風呂に行こうとする松山の手をしっかりと掴むと日向は自分の胸へ引き寄せ抱き締めた。
「・・・あっついよ日向」
「またメシ作ってくれよ。デザート付きで」
「・・・しょーがねーなーそのかわり、残さず全部食えよ?」
 日向が頷くと、松山も日向に抱き締められたまま、こくりと頷いた。



 1週間後。
 食卓を前に、日向は頭を抱えていた。目の前には不機嫌な松山。
「もう食わねえの?俺一生懸命作ったのに!」
「イヤ・・・俺あんまり甘いもの好きじゃねえんだけど・・・。味は旨いよ・・・」
「この前好きっていったじゃん!」
「確かにそう言ったけどソレはお前のことで・・・」
「とにかく全部食え!俺が食いたきゃそれからだ!」
 日向の前には5種類ものデザート。チョコレートケーキに、プディングに、ゼリー・・・。全て松山のお手製だ。味もまあまあだ。でもこれを二人だけで食べると言うのはいかんせん無理があるというものだ。
 やられた。前回松山も楽しんでいたとは思っていたが、不意打ちにはちょっと頭にきていたらしい。ホントに参った。でも松山もかなり意地になって、もぐもぐと甘いものを口に運んでいるように見える。
「・・・なあ、反町達よばねえ?」
「俺は日向のために作ったの!」
 仕方ない。コレも愛のためか?日向は心で泣きながらスプーンを口に運んだ。 

                      
                           おしまい


 またしても更新したとはいいながら、03松コミにて出したコピー本からの再録でございます・・・。
 お持ちの方はスイマセン。ハジメテの方はたのしんでいただけましたでしょうか?
 
 
 (05.4.10)