風呂上がりはやっぱりビール。
熱く火照った体に染みとおる、この一口がたまらない。風呂を出る度、ということは毎日飲んでいることになる。
スポーツ選手がこんなに飲んでていいのかどうかわからないが、一本くらいならどうってことないだろう。
多少のアルコールは百薬の長とも言うし。
そんなわけで、我が家の冷蔵庫には缶ビールが常備されている。ほとんどその容量の半分を占めているといっても過言ではないだろう。
飲むのは俺だけでなく、同居人の松山もだからな。
先に風呂をあがった俺は、リビングでつまらないバラエティ番組を眺めながら、今日もお約束の一杯を飲んでいた。
後から入った松山が出てくるまで待ってようかとも思ったが、やっぱり出てすぐに飲むのが旨いんだよな〜と、殆ど無意識に缶をあけてしまっていた。
がたがたと風呂場の方から音がする。どうやら松山も上がったらしい。
ぺたぺたと濡れた足音をさせて、すぐに松山がリビングにやってきた。
「あ、ずりぃ、俺もっ」
めざとく俺の飲んでいるビールを見つけたらしい。
殆ど濡れっぱなしの頭を、タオルでごしごし拭きながら俺のほうによってくる。それはいいけど、腰にタオル巻いただけの姿なんだよなぁ・・・。
見なれているとはいえ、ドキドキ(いやムラムラか?)してしまう。タオルから伸びた足のラインがなんとも言えないんだよな。
シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。同じヤツ自分も使ってるくせに、松山から香ってくるそれは俺の心を揺さぶるのだ。
とりあえず平然を装いつつ、俺はビールを渡した。
「あ〜 ?ホレ」
飲みかけのビールを受け取った松山は嬉しそうにそれを口にする。
冷蔵庫に冷たいのがいっぱい入っているのに、なんでか人のヤツを欲しがるんだよなこいつは。
一気にビールを飲み込む松山の喉元をじっと見つめてしまっていた。
あー、まいるなぁ・・・・・。
松山も俺の視線に気付いたらしい。ビールを飲むのを止めると、怪訝そうに俺を見る。
「何だよ?」
「イヤ・・・相変わらずイロッぽいな、と思ってよ。」
「アホ!何言ってんだよ」
俺の言葉に嘘はねえんだけど。
松山はぷいっと俺に背を向け、ぶつぶついいながらビールをもったままベランダへ出ようとする。
もう、コイツはしょうがねえな。そんな姿でベランダなんか出るんじゃねえ!誰が見てるかわかんねえんだぞ!!
内側ならまだしも―――。
俺は、黙って立ち上がると松山を背中から抱き締めた。
肩ごしに顔を埋めると、ちょうど白い貝のような松山の耳が俺の口元にくる。ふうっと、耳に息を吹きかけると松山が慌てたように振り向いた。
「バカ日向!!なに・・・してんだよっ!!」
「そんな格好で俺の前をウロウロするお前が悪い」
ちょっとした会話がもたらす息の風にすら、松山の耳は感じてしまうらしい。びくんびくんと腕の中の松山のからだが震える。
ついつい、それが面白くてわざと唇が触れるか触れないかくらいに口を近付け、いろんな場所へ息を吹き掛けた。
「ちょっ…ヤメロって、ひゅう…がっ」
松山といえば抵抗もままならず、どんどん感じてしまっているらしい。
首筋から耳にかけて、真っ赤に染まっている。
珍しいこともあるもんだ。ふだんならここらで一発くらいお見舞いされるんだけど。まあ、抵抗されないならそれはそれでいいんだけどさ。
いつの間にか、松山の両手は窓ガラスに体を支えるようにつけられていた。
夜なんで、窓ガラスに部屋の明かりが反射して俺の姿が鏡のように映って見える。
追い詰められていく松山も―――。
松山もどうやらそれに気付いてしまったらしい。余計に羞恥でカラダを火照らしてしまっているようだ。だからいつもより抵抗が少ないのか。
俺は確認のため、松山に一言投げてみる。
「ホラ、見てみろよ。お前、すっげぇイロッぽいぜ。」
窓に映った姿を指摘された松山は、一瞬、顔をあげてしまうが、窓に映った自分の姿に慌てて顔を背ける。
そしてぎゅうっとつぶった目元では睫がふるふると震えていた。
俺は、更に先へと促していく。
素肌に直接触れる俺の手の感触が風呂上りの体に妙に心地いらしく、僅かに動かすだけの指先にまでも感じてしまっているようだ 。>
「んッ…もっヤダ…ひゅう…がっ…こっ…こんなところでっ」
「ん〜俺、まだ何にもしてないぜ?もしかして感じてる?」
首筋にチュっと音を立ててキスをする。
毎度のことながら、初々しい反応がたまらない。わざと意地悪く言葉にして返してやる。
「はっ…ん」
「どうして欲しい?」
「ど・・・どうもしてほしくねえっ、はなせよっ日向っ」
反応は正直なのに、松山の言葉は相変わらず可愛くない。
「じゃあ、なんで腕が震えてるんだ?」
松山がガラス窓に押し付けた腕が、がくがくと震えている。
俺の悪戯な指先から生み出される微妙な愛撫に耐えきれずになんだろう。
あーあ。無理しちまって。
それでもなお、逃げ出そうと松山は俺に体を押さえられたまま無理にもがいた。
その拍子に、松山の腰に簡単に巻き付けただけのバスタオルがはらりと床に落ちた。
すんなりとした下半身が露になる。
「こっちは正直に触ってくれって言ってるぜ?俺の方みて」
「やっ!!あっ・・・さわんなっ・・・てっ・・・もっ」
松山のモノは密かに息付きはじめて形を変えているのを、俺はめざとく指摘しながら、そこにそうっと手をのばすと、優しく握った。
「はっ・・・ヤメロって・・・ばっ」
滅茶苦茶感じてるくせに。
それでも鏡のような窓ガラスに映った自分の姿を見て、まだ恥ずかしさもあるのか僅かな理性で抵抗する松山。
松山の考えていることが手にとるようにわかる。
わざと俺は優しく動かしていた手をピタッととめた。
「・・・何?」
「やめて欲しいんだろ?ん?」
意地悪な言葉と行動とは裏腹に、松山の耳もとにはわざと甘く低く囁く。
細かく痙攣する松山の腰はいまにも砕けそうだ。
涙目ながらも、松山が背後の俺を睨んでくる。
「・・・日向、意地悪だ・・・。」
「そうか?俺はお前が言う通りにしてるだけだぜ?」
松山自身に添えていた手も離すと、俺は松山の腰に両手をかけた。
腰骨をぐっと掴む。引き締まった、いい腰だ。
訝しげに松山は身をよじらせる。
「な、に・・?」
俺は松山の背に更に体重をかけて、松山の下半身をぐいぐいとガラス窓に押し付けるようにした。
「やぁんっ」
勃ちかけた松山のモノが、冷たいガラス窓に押し付けられる。
固いガラスに当たる感触に、逃げようとする松山の腰を俺は許さず背後から固定する。
松山の腰が逃げる度に俺が押し付けて戻す。
その、逃げては押し付けられる行為が、次第にまるで窓にそこを擦り付けるようにリズミカルなものになっていく。
「・・あっ・・・だめっ・・・やぁっ」
「なにがだめなんだよ。松山の言う通り、俺なにも触ってないぜ?」
「腰・・・・つかむ・・なっ」
「んじゃ離してやるよ」
言われた通り俺は腰を掴んでいた手を離し、ガラス窓に崩れそうなカラダを支えるために押し付けられた松山の腕の脇に手をついた。
腰を掴んでいた俺の手がなくなり、松山の腰は安定感がなくなりぐらぐらと揺れる。
しかし、上体や足の方は俺のカラダに押さえ付けられていて―――。
昂ってしまっている松山の中心は、既にガラスに押し付けず離れれることもできるのに、次第に快感を追いはじめてしまったカラダは、松山の意志を無視してそこを揺らしはじめていた。
「・・・はぁっ・・・ああんっ」
自らガラス窓に擦り付けるように腰を動かす松山の姿に興奮し、俺の息も荒くなってくる。
「すげえぜ松山・・・。ここ、お前のでめちゃくちゃ濡れてる。外から見えちまうかも」
「やっ・・・ああんっ・・・」
松山の瞳からは涙も溢れてきていた。
窓に擦られた松山自身は大きくなっていくが、この刺激だけでは最後まではいけそうもないだろう。
俺は、松山の一言を待っていた。
ぎゅうと目を瞑り、松山はようやく観念したようにその一言を口にした。
「・・・ひゅうが・・ぁ・・して・」
俺の股間のモノも、松山に負けず劣らず臨戦体制にはいっていた。
待っていましたとばかりに、松山自身に右手を延ばすと指先で先端をぐりぐりと弄ってやる。
「んっ!!はぁ・・やぁん!」
「いれて・・・いい?」
もう、松山もどうでもよいとでもいうように、がくがくと頭を揺らした。
それを俺は承諾と受け取り、松山の先走りで濡らした指先を、松山の尻の奥にぐいっと差し込む。少し乱暴にそこをほぐしていく。
ぐちゅぐちゅと出し入れすると、松山は指を締め付けてくるようになった。俺は指をひき抜き、部屋着のジャージを下着ごと膝までさげ、松山の尻たぶをぐいと掴んだ。
「からだ・・・支えとけよ」
「んっ・・・」
すっかりそそり勃った俺自身を右手で支えながら、松山の中に一気に埋め込んだ。
熱い松山の肉襞に包まれる。なんともいえない圧迫感がたまらない。
「あっ!・・・っつう・・・ああ・・・っ、やあっ!!」
「やっぱ・・松山ん中・・・イイ」
最初はゆっくりと出し入れした。
狭い松山のそこに擦れる感覚を味わう。松山のイイところを掠る度、ほかの喘ぎとはまた違う声で、松山の喉が鳴る。
「はぁあん!!んっ・・ああ、ああんっ!」
「松山・・・ホラ、つながってんの・・・映ってるぜ」
「や・・・あああんっ・・・も・・・ば・・・かっ!」
ふと視線をあげると、俺達が揺れているのが窓にうつっていた。
俺の好きな松山が快感に耐える表情もつぶさ見ることができる。
バックんときって顔が見えないからアレだけど、こーゆー方法もあったんだなぁ・・・と松山が知ったら怒りそうなことを思い浮かべながら、俺は更に動きを早めていく。
松山が必死に窓にカラダを押し付け、俺の激しい動きを支えている。
窓ガラスがガタガタと鳴る。
そろそろ、俺もイキそうだ。松山の屹立を思いっきり握った。
「あんっ、ああ、あっ、ああ―――!!」
「・・・・っつ!」
松山が果てると同時にもたらせれた松山の中の強烈な収縮で、俺も頂点を極めた。
ずるずると、窓ガラスに手をつけたまま、松山が座り込む。
全身汗でびっしょりだ。
床に落ちていた、松山の巻いていたバスタオルを渡すと、松山はひったくるように受け取りそれで顔を覆い隠してしまった。
「松山?」
「〜〜〜〜〜も〜〜〜〜!!!」
「なんだよ」
「こ・・・こんなのって・・・!もうもうもう!!!」
「もうもう・・・って、牛かよお前は」
「ま・・・窓で・・・やるなんて・・・ああ!」
「あー、自分で擦っちまったこと?俺もすげー興奮したぜ♪」
「言うな!!!もーほんとに・・・・」
松山はふらりとたちがると、バスタオルをずるずると引きずりながらリビングをでていこうとする。
「おい?どこいくんだ?」
「風呂はいりなおすんだよっ!!」
「そうか。じゃあ、ゆっくり入れよ。窓はちゃんと拭いておいてやるから安心しろ」
「う〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
松山はバスタオルを俺に投げ付け、怒ってドアを思いきり閉めた。
でもきっとこれからも、松山は懲りずにバスタオルだけ巻いてうろうろすんだよな、と俺は確信しながら、のんびりと窓に残った松山の名残りを拭きはじめた。
おわり〜〜〜〜〜;;