初詣

 
 

冬野ひまわり様より★ 


「やっぱ、人が少ねぇな」
 日向があたりを見渡し、ぼそりと呟く。
 正月をとうにすぎた神社の境内は人影もまばらで、とても初詣の雰囲気ではない。
「仕方ねぇだろ、大会があったんだから」
 横にいた松山が日向を見やり言い訳がましく口を尖らせる。
 年末から正月かけて行われる高校サッカー大会で、二人が所属する東邦高校は最後まで残り優勝を手にしたのだが、その分メンバーが正月気分を味わえたのは他の人間より大分遅くなってしまった。
 松山の初詣に行かないと年が明けた気がしないという主張に日向がつきあうことになり、どこからか若島津が調達してきた着物を二人で着て、駅向こうの大きな神社に初詣とあいなったわけである。
 しかし日向は思う。
 先日のサンタ衣装といい、この着物といいあいつは一体どこから手に入れているんだ?
 日向とはつきあいが長いはずなのに自軍のGKは謎だらけだった。



「あ、俺おみくじしたいっ」
 社殿の横を松山が指さす。
 さらりと着物の袖がすべりおち、ほどよく筋肉がついたしなやかな腕が露わになる。
 実は、日向は先程から松山が気になってしょうがない。
 なんといっても色っぽいのだ。
 初めて見る松山の着物姿。
 襟からのぞく白いうなじはまるで口づけを待っているようだし、裾から時々見えるすんなりした脚は誘っているとしか思えなかった。
 おまけに、着物は尻のラインがなんともいえずセクシーで・・・・。
 緩む頬を引き締めるために、自然と仏頂面になってしまっていた。
 ああっ……人目がなければ即押し倒すのにっ。
 日向の頭の中は危険思想ですでに一杯であった。
「やったぁ!!大吉っ!」
 そんな日向を知ってか知らずか、松山は無邪気な笑顔をむけてくる。
 あーもうたまらん。
「ま・・松山…俺腹痛ぇー」
「え??」
 突然、日向がお腹を押さえしゃがみこんだ。
「おっ・・・おい、大丈夫か」
 真剣に心配する松山の声に多少良心が疼かないわけでもなかったが大事の前の小事、目的の前には手段を選んではいられない。
「トットイレいくか?」
 よほど心配なのか、声がうわずっている松山の様子に日向は内心非常に嬉しかったが、ここで表情に出すわけにもいかず黙って頷いた。



 人気のない、境内のトイレ。
 松山の手を取ると一気に個室内に引き込んだ。
「うわっ、何するんだっ」
 騒ぐ松山を、トイレの壁に押しつけるといきなり口を塞ぐ。
「んっ!!んんっ」
 感情の高ぶりをそのままぶつけた激しいキス。
「てめー!!!なに考えてんだよっ!」
 唇を離すと同時に松山の怒りの鉄拳が、日向めがけて飛んでくる。
 それをかわし、日向は松山の腕を掴むと壁に押しつけた。
 力でかなわないことが悔しいのか、大きな瞳で睨みつけてくる。
 絶対負けを認めない、誇り高い松山の気質。
 松山の視線を真っ正面から受け、日向の欲情が一気に高まる。
「セックス」
 そう言うと松山の顎をひきよせ再び口づける。
 今度はより深く、貪るように口内を犯す。
 キスを繰り返しながら、日向の手は着物を裾をわり太股に手を這わせ、そのなめらかな触感を味わう。
「や…め…こん…なとこ…ろで…」
 松山は両手で日向を押しのけようとするが、すでにその手にはほとんど力が入っていない。
 むしろ、その仕草は日向の欲望を煽るだけだった。
 抵抗のやんだ松山から手を離すと、羽織の紐を解き着物の襟に手をかけ、一気に左右に開いた。
 白い胸が露わに目の前に晒される。
 そこに咲いた小さな赤い蕾に触れるか触れないかのキスをくりかえす。
「はっぁ…あっ…んっ」
 感じやすい乳首を舐られ、松山は声を押さえることができなくなっていく。
 甘い喘ぎ声が、赤く艶やかに濡れた唇から漏れる。
「も…う…やめっ…ろ」
「冗談、いまさらやめられっかよ」
 太股に這わせた手を徐々に上の方へとあげていく。
 ブリーフの中に手を入れると松山のものはすでに大きく勃ちあがっていた。
「ふっ、体は正直だぜ」
「く…るせぇ…ぁとで…あぁっ…はぁ…ぜってぇ…殺す……」
 息があがっているのにもかかわらず、松山は強がりをやめない。
 噛みつくようなキスを交わしながら日向の手は松山の中心を握った。
「…はっ…んっ…」
 直接的な刺激に松山の体が跳ねる。
 閉じた松山の目尻から涙がポロポロと零れ、朱色に上気した頬を流れ落ちる。
 日向はその陶器のような頬に唇をよせ、涙をすいとった。
 手は容赦なく、より激しく松山のモノに刺激をあたえつづける。
「はっ…あんっ……も…う……いっ…くっぅ…」
 快感に潤んだ瞳を日向に向け懇願する松山。
 すでに彼の中心は張り詰め先端に汁を滴らせている。
「まだ、イかせねぇ」
 日向はその願いを冷たく遮ると力の入っていないその体を後ろにむかせた。
 便器の蓋へ両手をのせ、後ろを向いて四つんばになった松山の着物からのぞく白い襟足に口づけをおとしていく。
 漆黒の黒髪がかかる、すんなりしたうなじに淡い朱色の花が咲いていく。
 「はぁっ…あ……ん…んっ… 」
 弱い首筋を後ろから責められ、松山は甘い声を上げ続ける。
 そんな様子を堪能したところで日向は松山の着物の裾を腰までたくしあげた。
 そして、ブリーフをいっきに引き下ろす。
 目の前に突き出された白い双球を鷲掴みにし、秘部を晒した。
 そのあまりにも恥辱に満ちた格好に松山の悲鳴があがる。
「…やぁああ……」
「あんまり大きな声出すと、まわりに聞こえるぜっ」
 日向はにやりと笑い、松山の秘められた奥底に先走りに濡れた指を差し込んだ。
「…い…たっ…」
 まだ慣れていないそこに、いきなり2本突っ込む。
 容赦なく松山の中をいたぶる、が、指は確実に松山の快感のポイントをついていた。
 感じるポイントをしつこいくらい嬲られ、次第に何も考えられなくなる松山。
 日向の指の動きにあわせて妖しく腰を揺らしてしまうのは無意識なのだろう。
「はあぁっ」
 指を引き抜かれた瞬間、松山は喪失感に切ない声をあげてしまう。
 その部分は再び快感を求め日向を誘うようにひくついている。
 日向はいったん体を離し、すでに勃起している自身にゴムをつけると再び、松山の腰をつかむ。
「欲しいんだろ?…言えよ」
 自分のモノを松山の入り口にあてがい、いぢわるく耳元で囁く。
「…ば…かっ…んなこ…と言え…」
「ふん、あいかわらず素直じゃねーな」
 ここにまできての強がりに、日向は苦笑するしかない。
 確かに松山の口から聞きたいという気持ちはあったが、自分自身先ほどからの松山の痴態で限界にきている。
「しゃーねーな…」


 日向はそう呟くと一気に松山を貫いた。
「あぁぁっ!」
 指とは全然違う太さと熱に松山の口から悲鳴があがる。
 強烈な衝撃に逃れようとする松山の腰を両手でつかみ、さらに深く己自身を沈める。
「…くっ…き…つっ…ちか…ら…ぬけっ…」
 激しい締め付けに日向の眉根がよる。
 このままでは動けない。
 日向は腰を折って松山の首筋にそって舌を這わし、軽く耳朶を噛む。
「はぁん…」
 新たに性感を刺激され、松山が奇麗に咽をそらした。
 松山の緊張が解けたのを見計らって腰をゆっくり進める。
「んっ―――」
 これ以上声を堪えることができなくなった松山が着物の袖を口に入れ強く噛みしめる。
 直接的な刺激に加え、己の中に日向の熱い欲望を咥え込んでいるという事実が松山の快感を更に追い上げる。
「──んんっ──んっ」
 日向の腰の動きが段々激しくなり、突き上げるごとに松山の口から押し殺した声が漏れる。
 粘膜の擦れる卑猥な音と二人の激しい息づかいが狭い空間を支配していた。
「はぁ…ああっ……」
 日向がより深く突き上げた瞬間、とうとう堪えきれなかったのか松山は声をあげ、己の精を解き放った。
「くっ……」
 同時に強く締め付けられた日向の方も自身の欲望を全て松山の中に吐きだした。




「なー、頼むよぉ…機嫌なおせって」
「い・や・だ」
 トイレから出て以来、松山は全く日向を見ようとしない。
 相当頭にきているのは解っているのだが、日向にしては松山も結構感じていたのに…という思いもある。
 でもやっぱりそこは惚れた弱みである。
 いつまでも、明後日の方向を向いていられると寂しい。
「甘酒、おごってやるからな」
 目の前に現れた屋台にむかってダッシュをかます。


 その様子に松山は苦笑するしかなかった。
 先ほどひいたおみくじの内容が頭に浮かぶ。
『このクジ運の人はお互いに素直に結びつけば仕合わせは独りでにやってくる、心も言葉も素直をたもつこと』
 素直…か。
 逆立ちしたって日向だけには素直になれそうもない。
 今だって本当は、とうに許しているのだ。
 松山自身、日向に抱かれるのは嫌いじゃない。
 でも、時と場所を選ばない日向の態度は時々頭にくる。
 だから、拗ねてみせているだけなのだ。
「なっ、うまいぞ甘酒・・・」
 戻ってきた日向が松山に甘酒を差し出す。
 一生懸命、機嫌をとろうとするその様子がおかしくって、つい笑みが零れてしまった。
「ふん、もったいないから飲んでやらぁ」
 ほんとうに素直になれたらいいんだけどな、そっと小さく溜息をついた。


「うっうまいか?」
 持ってきた甘酒を松山が受け取ってくれたことに日向はとりあえず安堵した。
 ようやく機嫌が直ったのか、おいしそうに甘酒を飲む松山。
 ふせた長い睫が濃い影をつくり、北風に晒された頬がほんのりと赤く染まっている。
 かっかわいいっ…。
 無意識に日向は手を松山の後頭部に回し、そのかわいらしい唇を求めて顔をよせていた。
 数秒後、人気の無い神社の境内に松山の雄叫びが大きく響いた。
「てめぇ!!絶対許さねぇっ!!!」


               Fin



 冬野ひまわり様より、我が家のお正月トップイラストから作って頂いたお話です〜〜〜〜!
 わぁ〜〜〜〜〜ん!!
 ひまわりさん、ありがとう、ありがとうございます〜〜〜〜!!
 もう、なんてまゆ好みのお話なんでしょう・・・・。は、鼻血がっ!!!(ぼたぼたぼた・・・・)
 松山君がホントかわゆくて、襲いたくなっちゃうのわかりますよぅvvv
 はぁはぁはぁ・・・・・。このシチュエーション萌えますよね・・・・・。(何度も反芻している)
 
 重いのに、挿し絵いっぱいつけちゃってスイマセン!
 楽しんでいただければ幸いなのですが;;

 東邦in 松山。
 かなりモエです!!やはりワタシは、この設定が多かった時代に松小次と共に青春時代を過ごしてますから!
 ひまわりさんの素敵作品により、ちょっとハマってます♪
 うふふ〜〜!!
 ひまわりさ〜〜〜〜ん!!これからもどんどん一緒にモエっていきましょうねっ。
 (
02.01.20)