早田誠は、日本陸軍の若き将校(少尉)である。
上海に赴任し、はじめて上官の供で松山のいる秘密クラブを訪れた。
その独特の雰囲気に気圧され、小用を済ますといって宴席を離れる。
自分と同じか、それよりも若い男女が今し方目にした給仕だけで無く、客の要求によっては春を売るという現実はわかっていても、簡単には受け入れられそうにもなかった。
店の中は迷路のように入り組んでいた。
まわりを気にしながらも、好奇心でうろうろする早田の目の前に、カーテンの影に隠れるように眠っている松山があった。
驚く早田。人の気配に気付き松山が目をあける。
本人も気付かぬうちに、熱っぽく自分をみつめている早田に軽く一礼すると、何もなかったように入り組んだ廊下のむこうに消えていった。
「あんなん子もおるんや・・・」
その後、供として何度も店を訪れるようになる早田が、松山の商品価値の高さと、その数奇な生い立ちを知るのに時間はかかからなかった。
事件自体はこの時代、いまさらどうこうできる問題ではなかったが、個人的に興味をもった早田は、松山について調べ始め、彼が北海道の学校にいたことを知る。
なんとなく、松山と話すきっかけの欲しかった早田は、松山にいまだ思い出せない記憶の中にある日本のことについて、教えはじめるのだった。
松山も親身になって、自分の過去を探してくれる早田にうちとけていくようになった。
早田よりおくれる事数カ月。
日本より若林が上海へ赴任してくる。
彼もまた、日本軍の将校であったが早田よりももっと上層に属す者だった。
若林の任務は、この上海の租界において、各国の情報を集める事。
当然のように店にも出入りするようになる。そしてすぐに店にとっても上得意客となった。
時を同じくして、共同租界とは別に存在する仏租界より、自ら店へやってきた岬という少年のもとに通うようになったためである。
実は岬も諜報活動を生業としているものであり、怪しまれずに若林へ情報を流すのに都合がよかったのだ。
岬はすぐに、店の中で一番いろいろな者、しかも上客に接する事のできる人間、松山に接近する。
松山は、この自分と同じくらいの年の美しい少年に親愛の情を示すようになる。
岬も目的とは別に松山本人の人間性に惹かれていった。
岬は、店での情報を若林に流す事を松山に教えると、また仏租界へ戻っていった。
情報といっても、松山にしてみれば何の事だかわからない客の会話を伝えるだけだったため、本人はあまり意識せず諜報活動に従事することになってしまった。
岬にいわれたとおり、馬鹿正直に自分に客の会話を話してきかせる松山を、若林は微笑ましくみつめるのだった。
客からの要望がたかまり、松山を売れという声をもはや無視できる状況ではなくなっていた。
苦し紛れに主人は、客の中で一番高い値をつけたものに松山を売るということにきめる。
当初、此処にきた当時は、自分も春を売ることになるのだろうかと覚悟していた松山も、今となってはそれすらも忘れる程になっていた。
客に体を触られたり、求められたりすることもあったが、自分の生い立ちがわかり、組織の中における自分の価値をわかった今、まさかそのようなことがあるとは思ってもいなかった。
その話が浮上するや、本人よりも日向が激怒する。
主人に詰め寄るが、己の立場をわきまえろと簡単にいなされてしまう。
「でも、しょうがねーんじゃねーの」
と、平静を装おう松山に対しても日向はやり場のない怒りを抱くのだった。
お互い、友情以上の気持ちがある事はわかっていたが、そういう想いを互いにぶつけたことはまだなかった。
日向はいわば商品の松山に対して、そういう感情をもってはならなかったし。
松山も所詮自分は使われる身。日向に対しての想いは秘めるだけと思っていたから。
どんどん釣り上がっていく松山の値段。
おおかたの予想では、ゲームでもするように金額を提示していく三杉が権利を得ると思われていた。
必死にそれに食い下がっていた松山に執心のアメリカの男は、決着を待たずして騒動を起こす事になる。
日中、外出中の松山を攫い、自らの屋敷で松山を犯したのだった。
常に側にいたはずの日向が、たまたま実家に戻っており、松山はそこにいく途中だったのだ。
翌日、組織の者に助け出される松山。
ゲームとはいえ勝負に不正を働いたアメリカ人の男は、三杉によって全てを奪われる事となる。
一方、とうとう他人に身をまかせてしまった松山は、自暴自棄になり望む客(もちろん主人が選ぶが)と寝るようになる。
一切、外出もすることがなくなった。
自分が汚れてしまったと信じている松山は、日向に顔を合わせたく無かったのだ。
以前に阿片窟へ日向に連れられていった事を思い出す。
その光景に声を無くす松山に、日向は「おまえは絶対こんなふうになってはダメだ。俺が守ってやる」といってくれた。
日向は松山が犯された事を知り、悲しむ。
しかし本当の悲しみは、その後、どんどん他人に体をひらいていくことはもとより、自分と会ってもくれないことだった。
やっと久しぶりに外出していた松山を捕まえる。
「もう、おまえに合わす顔がねえんだ・・・・」と逃げようとする松山。
降りしきる雨の中、何もいわずにただ、抱き締めるしか日向にはできなかった。
店の中で、客に抱かれて火照った体をようやくといった感じで支えながら、廊下を歩く松山の姿を目にするたび、日向の胸は張り裂けそうだった。
松山を抱く客を殺してやりたかったが、自分が松山に求めているものが同じであると気付いていく。
そして、とうとう激情を押えきれず、松山を奪ってしまう。
しかも店の中で、客よりもひどい扱いをして・・・・・・。
自己嫌悪に陥った日向は、松山を彼の自室に休ませると姿を消した。
日向の行為に対し、嫌悪感よりも日向の自分への思いをようやく身に感じる事ができた松山は、姿を消した日向を必死に探す。
若林や早田にも頼むが、その行方はみつからなかった。
意図してはいなかったにせよ、松山ははじめて上海の外にでてしまう。
脱走と受け取られた松山は、組織の追っ手に捕らえられてしまった。
逃げるつもりではないという本人の言い分をわかっていたものの、主人はまわりのものへの体面もあり、罰として地下に拘束する。
わけもわからず、後ろ手に縛られ、呆然としていた松山の前に、深夜はじめてみる長髪の青年があらわれる。
「・・・・この顔にはまったのか・・・」
男はつぶやきながら、松山の顔に手をかける。
そして懐から小刀を取り出した。
日向がみつからないのなら、いっそ死んでもいいと思い始めていた松山は、恐怖におののくでもなく、その刃をじっとみつめた。
しかし男は松山の縛られていた手首をそれで解放すると、訝る松山にこう言った。
「俺は若島津。日向さんが待ってる」
てな感じで;;
皆様にお配りさせて頂いた設定集は、ここで時間切れのため終わりでした;;
この後、若島津によって連れ出された松山は、日向のモトへようやくいけます。
若島津がすこしいじわるなのは、自分の尊敬する「日向さん」が松山に溺れてしまったことが許せなかった、という単なる逆恨みです(笑)。
しばらく一緒に過ごす彼等ですが、若島津も屈託ない松山自身の人柄に惹かれていくようになります。
松山本人が気付かぬうちに、ある秘密文書の内容を知ってしまった事に気付いた日本軍と組織から今度こそ本当に、松山の命が狙われてしまいます。
日向は松山を日本へ。彼が唯一よりどころになるであろう北海道へ逃げる事にします。
それには彼等を追う軍でありながら、早田が手助けしてくれます。若林も見てみぬフリをしてくれますが追っ手はひたひたと彼等に・・・・。
はたして二人はどうなるのか?
というところまではなんとなく設定したのですが、まだラストとか決めてません(爆)。
いえ・・・他力本願なので・・・・。なんか素敵なお話とか頂けたらと・・・・。
設定集には、まゆの当初の落書きもつけさせて頂いてたんですが、どうしましょう?これも紹介したほうがいいのでしょうか・・・・。
そのうちちゃんと色つけられるかな〜と思いつつ、シーンによっては素敵な頂き物もくると思われますので・・・・。
みたい、という方がいらっしゃればメールでもしてやってください。声が多ければ載せます。
ああ、ながながと読んで下さってありがとうございます!!!!!!!
こんなおばかな設定に、素敵なお話、イラストを恵んで下さっている女神様達の作品で、どうぞお楽しみくださいませ!!!!!!
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