たまにはこんな日も。

 
 

                        明日香様よりvv
 

たまにはこんな日も。


んっ…おわっ…」
何だか人の気配がして目が覚める。すると目の前に超ドアップの松山の顔。
「なんだ。キスしようと思ってたのに。」
はい〜〜〜?
そう言いながら俺の上から退くと、「折角起こしてやろうと思ったのに。」なんてボ
ソッと呟き、ボリボリ頭を掻く。
「あ、飯出来てるから早く食えよ。」
全く状況が掴めない俺。
朝は弱い方ではない。
どっちかと言うと弱いのは松山の方で、いつも起こすのは俺の方が多い訳だし。
朝飯…普段食わねぇだろ?お前。

「俺今日忙しいんだからさ〜」
そう言って差し出されたコーヒーと目の前にあるトースト。
…かなり焦げてるんですけど、コレ。
まぁ、珍しくも松山が作ってくれた物だ。それは大目に見るとしよう。
出されたコーヒーを頂く。
「…苦っ!…っだよ、コレ。お前どういう作り方してんだっ!」
思わず叫んでしまう。しまった…。
「そう?分量、間違えたかな〜砂糖入れれば飲めるだろ〜?」
絶対言い返して来ると思ってた俺は予想外の松山の返答に次の言葉を失ってしまった。
どうしたんだ、一体…。


そのまま焦げたトーストを食べ、苦いコーヒーを飲み干す。
「もういらねぇ?コーヒー、まだあるぜ。」
「イヤ…もらおうかな。」
断わるつもりが、松山の顔を見たらついカップを差し出していた。
こんな苦いコーヒー、松山が入れたんじゃなきゃ飲めねぇって。

「で、忙しいって何か用事あるのか?」
昨日は何も言ってなかったハズだが。
久し振りに二人一緒のオフで、今日はゆっくり過ごすつもりだったのに。
「ん〜ちょっとな。」
そう言って時計を見て、ソワソワしてるように見えるのは俺の気のせいか?
何だか腑に落ちない気分でいると、携帯の着信音。
「日向、電話電話。」
俺の携帯なのに、松山の方が慌てて取りに行く。
いつもだったら知らん振りだろ?自分の携帯が鳴ってても気付かない事もあるヤツが
今日はなんでまた…。
渡された携帯の液晶には若島津の表示。
滅多に電話して来ないヤツが何の用だ?
「あ?俺。何だ?今日か?別に良いけどよ。ああ。分かった。」
「若島津?なんて?」
液晶を見たのか電話の相手が若島津と悟った松山がにこにこしながら俺の隣に座る。
「なんか話があるって言うからよ、来てくれってさ。…なんでお前そんなに嬉しそう
なんだ?」
「そ、そんな事ないだろ?若島津、待ってるんだろ?ホラ、急いで用意しなきゃ!」
俺に早く出て行けと言わんばかりに出かける準備を促す松山。
「お前なんか隠して…」
「ハイ、行ってらっしゃい!あ、今晩は鍋するから、夕方には帰って来いよ。じゃな
。」
そう言ってドアを閉められた。
今晩は鍋ねぇ…確かに昨日そろそろ寒くなってきたから鍋も良いよな〜と喋ってはい
たが。…松山が準備するのか?
今日は一体どうなってるんだ。アイツ絶対なんか隠してやがる!帰ったら絶対聞き出
してやる!
俺は悶々とした気持ちを引き摺ったまま、若島津のところへ向かう事にした。

結局若島津の話は何だったのか。クダラナイ話で引き止められてたような気がする…。
昼飯が奢りじゃなければ早々に帰ってきたくらいだ。
「帰ったぞ。」
夕方近く、マンションに戻ると鍵は掛かってなかったが、返事も無い。
靴は置いてあるので、出掛けてはいないハズだ。
「…何やってんだ?お前…?」
リビングへ足を運ぶと縄と格闘する松山の姿があった。
「日向?もう帰ってきたの〜?」
振り向いたその姿は随分汚れているように見えるんだが…。
「もうっ、上手く結べなくってさ〜コレ。何度やっても解けて来るんだよ〜」
どうやら古い雑誌を纏めてる様だった。
よくよく見ると部屋の雰囲気も今朝と違うような…。
「お前、掃除したのか?」
「ん?ま、たまにはな〜キレイになったろ?」
得意気に言う松山。…今朝より散らかってるとは言えない、よな?
「洗濯もしたのか?」
干してあるTシャツ、確か白かったよな?
「洗濯って一番簡単だよな〜全部放り込んだら全部洗濯機がしてくれるんだもんな。」
そう言いながらも縄と格闘する手は休めず、縄は一層絡まっているように見える。
ああ、もう見てられねぇ!
「ホラ。」
「おっ、日向、すげぇ!」
そう素直に喜ばれると何だか調子が狂う。
しかし、コイツってサッカー以外はホント、不器用なヤツだな。四苦八苦して縛った
であろう雑誌の山を見てつくづく思う。どれもこれも持ち上げたら崩れてきそうだぞ。
結局俺が縛り直してやるハメになるんだよな。

「日向ぁ、お湯溜まったからさ〜飯食う前に風呂入れよ〜」
最後のひとつを縛り直してる間に姿が消えてた松山の声がバスルームの方から聞こえ
る。
「今から鍋の用意するからゆっくり入って来いよな。」
そう言って俺を風呂へと急がす。
絶対今日はおかしいぞ、松山のヤツ。

「もう、若島津のヤツ、帰すの早過ぎ。間に合わねぇじゃん。」
良いお湯加減に満足してゆっくり入ってきたハズだったんだが、松山はまだまだ俺が
のんびり入っていると思ってたんだろうか、俺が出てきたのも気付かず、ブツブツと
言いながら野菜をぶった切っていた。
…包丁の使い方、大丈夫かよ。
「若島津がどうしたって?」
「え…うわッ日向、もう上がったのかよ。早かったな。」
「危ねぇな!包丁、こっち向けんなよ。…結構ゆっくり入ってきたんだがな。もしか
して若島津に俺を呼び出すように頼んだのか?」
そう考えると辻褄が合う。若島津から呼び出されたものの、何の脈絡も無い会話ばか
りで腑に落ちなかったんだ。
「し、知らねぇよ。それよりさ、もう出来るからビールでも飲んでろよ、な。」
…相変わらずウソがつけねぇな、コイツは。顔にしっかり出てるっての。
しかし、俺を追い出してまで掃除や洗濯したコイツの考えがさっぱり分からねぇ…。
「ちょっと待て。それは何だ?」
「何って、砂糖じゃん。」
「んなもん、鍋に入れるな!」
「え〜だって日向、いつも入れてんじゃん〜」
「それはすき焼きの時だけだろう?鍋には砂糖入れないんだよ!貸せっ!」
手に持ってた砂糖を取り返す。
…やっぱり任せておいたら何が出来るか不安だ。
口を尖らせて膨れる松山を横に、結局俺が味付けをする。
野菜も繋がってるのがいっぱいあるし。
手を切らなかっただけが救いか?

「美味そうじゃん〜〜」
出来上がった物を目の前に松山は満足気に食べ始める。
そんな姿を見てると今日一日の松山の不可解な行動なんてどうでも良くなって来るん
だが、飯を食い終わった後もいつもだったら片付けなどしない松山がさっさとキッチ
ンに向かった姿を見てやっぱり聞いてみようかと自分の食器を持って後を追う。
「なぁ、お前さ、今日どうした訳?いつもやんねぇじゃん、こんな事。」
「そうか?いつもしてもらってばっかりじゃ悪いかなって思ってさ〜だって今日はさ
…おわっ…」
鼻歌交じりに食器を洗っていた松山の手から湯呑が滑り落ちる。
見事に粉砕。
「あ〜あ、やっちまった…っつ…」
割れた湯呑を片付けようとして延ばした手を慌てて引っ込める。どうやら手を切った
様だ。
「大丈夫か?見せてみろ。」
見ると大した事は無いようだが、人差し指から少し血が出ていたのでつい舐めてしまっ
た。
「オイ、ヤメロって。ちょっマジで…」
嫌がる松山がおもしろくって調子に乗って指に舌を這わせると、僅かな震えが伝わっ
てくる。
…もしかして感じてる?
「もうっ!ヤメロってばっ!」
「痛っ!お前、マジで蹴るなよっ!大事な商売道具、使い物にならなくなったらどう
してくれんだよ…」
思いっきり脛を蹴られて思わずしゃがみ込んでしまう。
「お前が止めないからだろ!もうっ!俺風呂入って来る!後やっといて!」
そう言って逃げるようにバスルームの方に行ってしまった。

所詮二人分。後片付けなんてあっという間に終わってしまった。
松山が風呂から出てきたらさっき言いかけた言葉の続きを聞こうと思ってたんだが、
今日はいつもと違う事がありすぎて疲れてたのか、ソファーに転んだらついウトウト
としてしまったらしい。
気が付くといつの間に風呂から上がったんだろうか、素っ裸のままの松山が立ってい
た。
「お前何やってんだ。風邪引くぞ。」
なんか様子がおかしい。…手に持ってるのは何だ?
「日向、今日はコレでしよ。」
そう言って持っている物を渡してきた。コレって縄じゃねぇか。
「…縛って。」
は〜〜〜?
コイツ、そんな趣味あったっけ?
風呂上りで火照ってるからなのか、照れからなのか、いつもの白い肌がほのかに赤み
を帯びているのが妙にソソる。
「痛くすんなよ。」
上目遣いに俺を見てくる。
おわ…堪んねぇ…
何処をどうしたものか、反町辺りが見ていた雑誌を記憶の奥から引っ張り出して松山
を縛り上げる。
「は…ぁん…日向ぁ…」
縛っただけで感じてるのか、松山の口から甘い声が漏れる。
こんな有られも無い姿を見せられて、俺の方がどうにかなってしまいそうだった。

「…ぅが。日向ってばっ!」
おかしい…さっきの甘い喘ぎとは違う松山の声。
「もうっ!こんなトコで寝んなよ。」
目の前にトランクス1枚で仁王立ちの松山の姿。
…さっきのは夢だったのか。そりゃそうだよな。松山が縄持って縛ってくれなんて言
う訳無い。今日松山が縄と格闘してたのを見たから変な夢見ちまったんだ。
「…何だよ、コレ。なんかヤラシイ夢でも見てたんだろ〜?」
下肢の膨らみを指摘される。
「ばっ…んな訳ねぇだろ!あ、朝立ちと一緒だ!」
「ふうん…」
苦しい言い訳に納得したのかしないのか、意味ありげに言うと俺のスラックスの中に
手を入れ、直に俺自身に触れてきた。
「オイ、ちょっ…バカ、何する…ヤメロって…ばよ…」
さっきの夢の所為でギンギンに昂ぶってた俺を手で扱き始める。
「はぁ…マジ、ヤバイから。松山…ヤメロ…」
それでも松山の手の動きは止まらず、
「…っ!」
あっという間に松山の手の中で達してしまった。
「すげ、早ぇ…」
右手に付いた俺の放出したモノをまじまじと見る松山。
あんな夢を見た所為だ。でもそんな事松山には言えねぇし。何を言っても言い訳にな
るような気がしてただ脱力感に身を任せてその場に転ぶ。
しばらくしてふ、と俺の上にいた松山の姿を見て息を飲んだ。


「おまっ…何やって…」
松山は着ていたトランクスを脱いで、俺の放出した欲望を自分の後ろに運び、俺しか
知らない筈の場所を自分で弄っていた。
「は…ん…っ」
松山の左手の中にある松山自身は松山の手の動きに合わせて徐々に姿を変えていった。
…これも夢じゃねぇだろうな?イヤ、さっきの生々しい感触は夢じゃねぇ筈だ。

恍惚とした松山の姿を目の当たりにして、さっきイッたばかりで萎えていた俺自身も
あっという間に再び昂ぶり始めた。
「…ひとりですんじゃねぇよ。」
松山のモノに手を伸ばし、松山の手に添えるようにして動きを共にする。
「ん…っはぁん…日向ぁ…」
松山の口から漏れる声が艶を帯び始めて、その声を聞いてるだけでも先走る液が流れ
るのに、
「…っ、ま、つやま…何する…」
松山は俺自身を銜え込み、今まで自分を扱いていた左手を添えて先を促す。
ちゅぱちゅぱと卑猥な音がより一層俺を刺激する。
松山の舌が丹念に舐め回ると、俺自身がドクドクと脈打つのが分かる。
時折苦しげに息を吐きながらも俺を絡める舌を止める気配は無かった。
「も、ヤメロ、松山…」
このままだと松山の口の中に出してしまう。
松山の髪の毛を掴んで引き離そうとすると、松山の方から口を離した。
「はぁ…」
息が上がる。それでも続きを求めて細い腰を掴み、バックから挿入するつもりで俺の
上から退かそうとすると、その行動をやんわりと止められる。
「松山?」
松山はそのまま俺の上に乗り上げ、俺自身を自分から挿入しようとしていた。
「くっ…」
予期せぬ松山の行動に戸惑ったが、少しでも松山の中に入り込んで行き易いように俺
も動き始めた。
松山が俺の欲望で潤していた所為か、あっという間に俺自身を銜え込んだソコはかな
り熱を帯びていて、俺を締めつける。
「ん…っはぁっ、ああ!くっ…日向、動くな。」
欲望に身を任せて完全に松山の中に入った俺が松山の敏感な所を捜し始めようとする
と、松山が制した。
「な、に言って…っ!」
松山は俺の上で腰を振り始めた。
「あ、ああんっ…あ…」
自分で俺自身を敏感な部分へ導くつもりなのか、何度も腰を動かしては甘い声が漏れ
る。
いつもの松山からは想像できない行動を始めた松山に俺の方が先にイッちまいそうだ。

「はっ…ああ、ああんっ!!」
一番感じる所に行き着いたのか、さっきまでとは違う嬌声に変わる。
「動くぞ。」
動くなっていう方が無理だ。俺は松山の細い腰を掴み、突き上げる。
「あああああ――――っ!!!」
何度も挿入を繰り返し、俺しか知らない松山の敏感な部分を攻めると、松山はガクガ
クと震えだし、俺の腹の上に白濁の液を吐き出した。
そして俺もその時の松山の締め付けに耐えられず、松山の中に欲望を放出した。



「なぁ、今日は一体どうしたんだ?らしくない事ばっかりだったぞ。」
俺の上に倒れ込んできた松山を抱き締め、髪の毛を触る。
ヤッたばかりで汗もかいてるのに、風呂上りの良い匂いがする。
「ん〜…だって今日は勤労感謝の日だろ?若島津がさ、その日は自分の為に働いてく
れてる人に感謝する日だって言っててさ、松山は日向さんに感謝するんだろ?って言
うからさ。お前いつも家の事やってくれてるし、そうなのかなって思って。」
そこまで言うと松山は大きな欠伸をひとつ。
「…でも疲れた。やっぱ、俺には無理だ。明日からまた頼む…な…。」
本人の言う通り、普段し慣れない事ばかりしたからよっぽど疲れたんだろう。そのま
ま俺の上で寝息を立て始めた。
これは若島津に感謝すべきなのか?
アイツの事だ、会ったらきっと『感謝して下さいよ』ってな顔するに決まってるんだ
が。
…しばらく会いたくねぇな。

松山にパジャマを着せ、ベッドに運ぶ。
明日からはまたいつもと変わらない日常が戻るんだろうが、明日の朝は俺がキスして
起こしてやろうか?そして飛切り美味いコーヒーを入れてやろう。

2002.11.17

 
   


 明日香様より、お誕生日プレゼントに頂いてしまいましたvvv
 先週ワタクシ誕生日だったんですよvvv今年頂いた唯一のプレゼントだったりします;;もう、めちゃくちゃ嬉しいです〜〜〜〜!!
 私の好きな時事もので、裏です!もう、よ〜くわかっていらっしゃる!!
 いいなー、日向さん!!松山君にこんなことしてもらえるなんて〜〜!!羨ましすぎるぞ!!もうひたすら唸り捲りでした。
 ああ、可愛いな〜松山君ってば!家事苦手っぽいところとかすごいツボです。で、自分から・・・なんてっ。もうもう大好き〜〜〜〜!!
 本当に明日香さんありがとうございました。そして変な挿し絵でスイマセン;; (02.11.
23)

 さらに挿し絵追加してしまいました;;(02.11.30)