たなばたばなし。あるいは「ためしてみよう2」

 七夕祭り。
 いわゆる笹飾りをして、夜、空を見上げて織姫と彦星が年に一度の逢瀬を楽しんでいるか確認して。そんな認識しかない。
 たぶん、この東邦学園学生寮の住人達も同じ程度のノリのはずだ。
 なにかと季節ごとの祭りの度に、便乗してそのイベントをちゃっかり楽しむのが寮生達の約束事になっている。やはり実家をそれぞれ離れて暮らしていると、家にいればなんの感慨も抱かないであろう小さな行事でも、とても大切なことのように思うようになるのだろう。
 今さら高校生にもなって、笹に折り紙で作った短冊やら提灯やらを喜々として飾り付けるのは、はたからみれば滑稽かもしれないけれど、やってる本人達もそれはわかりながらも単調な日々にメリハリをつけるべく参加するのだ。

 今年も学園の裏山の竹林から切り出された立派な竹が、寮の娯楽室に運び込まれた。
 食事どきに各寮生に色紙が数枚配られる。ひとり分。自分の短冊と、飾りを作って七夕前までに勝手に竹に飾っておく。
 強制参加ではない。あくまでも個人の自由ということで。
 それでも毎年、飾りは華やかになるということは、ほとんどみんなが参加しているということだろう。
 
「松山明日早起きできるか?」
「何です?明日は朝練やすみですよね?」
「せっかくだから一緒にどうかなと思って」

 俺が飯のお代わりをもらおうと席を離れた耳に、松山と誰かの声が入ってくる。
 振り向くと松山が、サッカー部の先輩になにやら話しかけられている。
 松山は今年から、高等部に編入してきた。
 俺の心配通り、皆に好かれてモテモテだ。本人は鈍くてあまり気がついていないけれど、みんながなにかと松山を構いたがる。
 それはしょうがない。だが、松山も律儀にみんなの相手をしてしまうから、俺の心中はいつも大嵐だ。
 目を離すとすぐこれだ。どんぶりに山盛りに飯を盛ると、何ごともなかったように松山の隣の席に戻る。

「松山、飯」

 楽しそうに話している松山と先輩にぶしつけとはわかりながらも、話を折らせてもらう。
 松山の残り少なくなった茶わんに、今俺が盛ってきた飯の半分をよそう。それでちょうど普通の一杯くらいになる。

「え、俺たのんでねえし・・・つーか、こんなにいらねえ」
「いいから、食え。ちゃんと食って早く俺みたいにでっかくならねえと、レギュラーなんかとれねえぞ。お前なんかまだ一年坊主なんだしよ」
「うるせえな!お前だって同じだろ!!それにまだ育ちざかりなんだからわかんねえだろ!確かに今はお前よりちいせえけど、すぐに追い付くんだから!」
「だから気をきかせてやってるんだろうが」


 すっかり先輩との会話を忘れ、俺とのやりとりに気をとられてしまった松山に先輩が苦笑いする。

「じゃあ、松山、大丈夫だったら明日」

 はたと気付いた松山が慌ててフォローに入る。

「あ、先輩スイマセン、もーコイツいつもこーなんで」
「いやいや、気にしなくていいよ。おい、日向、あんまり松山からかうなよ」

 俺は無言で、ぺこりと頭を下げた。どうせ悪いのは俺だろ。
 でも、これで話は終了ってことだ。
 先輩は松山に軽く手を振ると、空になった食器を載せた盆を片付けて食堂を出ていった。
 松山はそれに答えてやはり俺と同じようにぺこりと頭をさげ先輩を見送った。その表情はにこにこと笑顔だったけど。

「オマエさ〜、人が話してる時にヤメロよな〜」
「なにが」
「いつもこうなんだもん。俺ってなんか集中力なくてバカみたく思われちゃうだろ」

 どうやら、松山なりに俺が邪魔をしてるのはなんとなく感じ取ってはいるらしいことがわかった。ただ、ほんとに邪魔してるとは分かってないみたいだが。
 
「バカじゃねえだろ、松山は」
「だってみんないつも笑うじゃん」

 ぷうっと膨れっ面になる様に、やられそうになる。か、かわいい!!
 そう、こういう表情は俺の前でしか出さないから、他のやつらはニコニコ笑顔の松山しかしらねえんだよな。ちょっとした優越感に、思わず頬が緩みそうになる。
 だからわざとちょっかい出してしまうって言うのを、ズバリ指摘してきたのは、いまのところ若島津と反町だけだ。
 そんな二人は少し離れたテーブルから、俺の方に「またやりましたね」といった顔を向けてきた。
 反町が自分の口元をさしながら、「ここ、ここ!!」とクチパクでジェスチャーしている。
 どうやら、ほんとに口元が弛んでいたらしい。
 松山にもめざとく見つけられる。

「何お前も笑ってんだよ」
 
「いや、それは俺が悪いからしょうがねえんだ」
「え?なにいってんだ?」
「まー食え。飯冷めると不味いぞ」
「なんか・・・うやむやにされてる気がする」
「気にすんな」




 お約束のようだが、松山と部屋は同室だ。
 いくら高等部から編入してくるヤツはいるとはいえ、ほとんどが中学からの持ち上がり組だ。しかも寮生となると更に面子は同じになる。
 やっぱりそんな中で、松山が楽に溶け込むことができるように、という尤もらしい理由をもとに、顔見知りの俺と同室になるように、密かに小泉さんサイドから手を回してもらった。
 食事を終えた後は、風呂に入ったり、勉強したり、それぞれの時間を過ごす。
 宿題を済ませてからという松山より先に、風呂に入り俺は部屋に戻った。
 
松山は既に宿題は終わらせたのか、今は色紙を手に、四苦八苦していた。
 
「いまなら風呂空いてるぞ」
「んー、いま行く・・・・」
 
 どうやら七夕飾りを作ろうとしているようだが、うまくいかないらしい。
 なにやら怪しい物体が松山の手の中で組み立てられている。

「それなんのつもりだ?」

 思わず俺はきいてしまった。
 むっとしたように松山が見上げてくる。

「・・・提灯」
「貸せ」

 ウチは弟や妹がいたから、実は折り紙とかは得意だったりする俺。
 七夕のときの提灯って言うのは、たしか、ここに切り込みをいれて、折り曲げて、両端を留めたら・・・・。

「あ、これこれ!!日向凄い!!」

 出来上がったものをみて松山が感嘆の声をあげる。こんなことくらいで感動されてもな・・・。
 でも松山が期待を込めた目で、残りの紙を俺に差し出してくるので、仕方なく、俺は思い付くままの七夕飾りをハサミを駆使しながら完成させた。
 
「日向さんきゅ〜な♪なんかこーゆーの小学生の時に学校でやったきりだったらから、忘れちゃってたし」
「お前が不器用なだけだろ」
「あのなー、人が素直に感謝してるときにそーゆーこと言うなよな。ま、でもほんと日向よく作れるよな。俺吃驚しちゃった」
「どーも」
「東邦って意外と面白いな。みんなで真面目にこういうこともするんだもんな。高校生になって七夕やると思わなかったもん、俺」
「まだ7月だろ。これから凄いぞ、行事目白押しだ」
「ふーん。でもちょっと楽しみかな。こういうのもいいよな」

 喋りながら、風呂へいくしたくをはじめた松山に、思い出したように問いかける。

「そういや、さっきの話」
「さっきの?」
「飯んときに先輩と約束してたのって、なんだったんだ?」
「あー、あれ?たいしたことじゃねえよ」

 松山にはたいしたことじゃなくても、俺に滅茶苦茶気になることなんだが。しかもだ。朝がどーとかいってただろう。結構細かく覚えてる俺。
 でも言葉はわざとらしく、迷惑そうに言う。

「朝早いとかっていってただろ。せっかくの休みの朝、お前にばたばたされちゃかなわん」
「そっか」

 これのなー、といいいながら、松山が机の上に残されていた短冊用の色紙を手にした。
 七夕と朝って何が関係あるんだよ。

「俺も初めてきいたんだけど、七夕の日の朝に、里芋の葉にたまった朝露で墨を擦ってさ、それで短冊に願いごと書くと叶うんだって」
「朝露?」
「そう。それで先輩が朝、川の側の畑にいかないかーって誘ってくれたんだよ。他にも何人かいくらしいんだけどさ」

 二人だけじゃなかったのか。よかった。ほっと胸をなで下ろす。
 しかし、そんな話きいたこともなかった。きっと先輩の実家の方の慣習なんだろうな。こういう年中行事って地方ごとに随分違うみたいだし。
 たまたまウチの学園は広いから、敷地のはずれに畑もある。里芋ってどんな葉っぱだったか忘れちまったけど、そういうのもあるんだろう。

「で、お前行くの?」
「うーん、なんか面白そうだし。せっかくだからいいかなって。日向もいかねえ?」
「そうだな・・・」
「ちょっと考えとけよ。俺、風呂いってくるわ」
「おー」

 
 こういう行事モノの時に、なぜかいつも蘊蓄をかたむける若島津が何もいってこないことに気付く。
 あいつもしらねえのかな?ちょっと聞いてみようかな。
 若島津の部屋を訪ねると、こちらが口を開く前に、硯と墨と筆を渡された。墨汁じゃなくて板の墨だ。

「はい。明日これ使うんですよね。どうぞ」
「なんだ知ってたのか?」
「先輩が松山に話し掛けてたの俺も聞こえたんでね。あれって神奈川のほうの一部地域だけらしいですけどね」
「そうだったのか」
「どうせ松山が行きたがるから、日向さんもついていくんでしょ?これは俺からのささやかなプレゼントです」
「でも露取ったらみんな集まってやるんじゃねえのかな・・・」
「日向さん、それだと行く気ないでしょ。だからあんた達は部屋に戻って二人でやればいいじゃないですか。松山独占したいんでしょ?」
「あー、そんでか・・・」

 若島津とは長い付き合いだが、ここまでしてくれるとなにか裏がありそうで恐いとか思ってしまうのは、俺がおかしいんだろうか。
 とりあえず差し出された「お習字セット」(だよなー)を自分達の部屋に持ち帰った。
 松山は喜びそうだが・・・。
 どうしようかな。松山が行きたがってるのに行くなとは言えねえし。かといって、俺がついていくのも先輩をはじめみんなが吃驚するだろう。俺のキャラじゃねえもんな。みんなで仲良く朝露集めって。
 考えを巡らせながら、手持ち無沙汰で、ふさふさとした筆の穂を弄ぶ。
 ―――松山には協力してもらえばいいんだよな。
 あることを思い付いた俺は、早々にベッドに入り、翌朝に備えることにした。
 風呂からあがった松山が戻ってきた。
 
「あれ?日向もう寝ちまったの?明日どーすんだよ」

 俺が返事をしないでいると、机の上にあった硯などに気付いたらしい。
 
「なーんだ。日向も行く気まんまんなんじゃん。じゃ、俺も早くねよっと」

 電気が消されると、ごそごそとベッドに潜り込む音が聞こえた。
 そうだ、松山。明日の朝は早いぞ、しっかり寝とけ・・・・・。
 
 


「松山?起きろ朝だぞ」
「・・・んっ?・・・眠・・・ぅい。あと・・ちょ・・・っと・・・」

 寝起きのよさそうにみえる松山だが、実は朝が弱いらしい。
 毎日、起こしてやるのは俺の方だった。
 朝練とかの時間までには、すっかりしゃんとして、他のみんなには爽やかな笑顔を見せる松山の本当の姿。
 ふとんを頭まで引っ張り、あと五分だけ、と呟いている。
 そんなことしたって意味ないのによ。どーせ起きなきゃいけねえんだから、さっさと起き上がっちまった方がいいと俺は思う。
 まあ、今朝はどっちでもいいんだけど。

「朝露・・・集めんだろ?」
「・・・あっ、そっか・・・」

 松山が眠い目を擦りながら、のろのろと起き上がってくる。

「ん―――」

 ようやく上半身は起き上がったものの、今だ覚醒途中らしい。
 座り込んだままぼーっとしている。

「なあ、松山。畑までいかなくても集める方法あるんだけど?」
「ん?」
「お前そのまま寝ててもいいし」
「・・・どうやって?日向だけいくんなら、俺も・・いくし・・・」
「いや、ここで」
「ここ・・・でって、部屋で?」

 ねぼけ眼で俺を見上げてきた松山に、うなずく。
 そうして、松山のベッドに俺は腰かけながら、松山の両肩を引き寄せると、問いかけて半開きになった松山の唇に誘われるように俺のそれを重ねた。
 唇をなぞるように舌先で湿らせていく。松山はまだぼんやりしたまま自分の身に起ころうとしていることを気付いていないようだ。
 軽く松山の柔らかな舌を絡め取ると優しく噛み、唇を離す。

「な・・・・なにっ?」

 ようやく、意識もはっきりしてきたのか、松山は目を大きく見開いた。
 真っ黒で大きな瞳が濡れている。そして、俺に必死で問いかけるように瞳を揺らす。
 俺はそれを無視して今度は背中に腕を回し、しっかりと強く抱き締める。
 温かな体温が心地よい。首筋に鼻先を埋めると、俺の大好きな松山のにおいがする。

「ちょっ、日向っ・・・んっ・・うっ」

 抗議にも似た強い口調の言葉が松山から漏れるが、俺はその言葉を飲み込むように再び唇を捕らえた。
 これ以上ないというくらいに深く唇を合わせ、隙間から舌を侵入させる。
 松山が顔を引こうとするのを、逃がさないように更に強くキスをする。お互いの唾液が口端から溢れる。
 濡れた音が耳に響く。

「・・・もっ・・・な、なんなんだよっ」
「だから短冊つくるんだろ?」
「あ、だから・・・みんなのとこ・・・いかなくちゃ」
「まずお前の朝露だしてからだろ?」

 松山のパジャマのズボンの前を軽く握り込む。

「なっ・・・!」

 慌てて、俺の両肩に手をついて押し退けようとするのを、そのまま被いかぶさるように体重をかけ、ベッドに押し倒した。
 俺達はまだ若い。ガキだ。だからこそ、性的にとかそんな理由はなくても朝、その部分が勃ってしまうのは仕方ない。
 松山のそこは、俺とのキスで反応を示しはじめていることを、俺はすぐに気がついていた。
 というより、そうなってもらうのが目的なんだけど。
 布地の上から、揉むようにしてやると俺のシャツを掴んでいた腕が震えていた。
 それでも必死に俺の囲いから逃げようと体を突っぱねている。
 はじめて体を重ねたのは昨年の全日本合宿の時だ。ようやく手に入れた愛しい松山。
 こうやって東邦にきてから数カ月。二人が体を重ねた回数はまだ片手くらいだろうか。
 俺としては耐えるのに精一杯だ。ほんとは毎日でもしたい。
 しかし、松山が嫌がるし。無理矢理やってしまえば、どうにか松山も応えてくれるのはわかっているんだけど、慣れていない体には辛すぎるのか、その後の松山の消耗具合がさすがの俺も躊躇してしまうくらいなのだ。
 それでも以前よりは、体を重ねるごとに松山も感じてくれるようになっている。なので、最後まではしない、こういうことはたまにしてやっているんだけど・・・。

「やっ、なんでこんな朝っぱら・・・にっ・・・!」

 確かに。普通だったら朝はしねえよ。
 いつもは練習あるしな。そんなこと仕掛けたら、しばらく口きいてくれなくなりそうだし。
 でもなんで今日はやるのか?
 まあ、ちょっとした意地悪っていうか、探究心だろうか。
 松山のいろんな顔をみてみたいんだ・・・・。

「松山、楽にしてろ。抜くだけだ」
「そ・・・、そんなっ・・・だって・・・」

 パジャマを膝まで下げ、勃ちあがったそこを今度は直接握り込む。
 松山の腰が小刻みに震える様が、とても可愛い。

「かわいい・・・」

 思わず俺の口から漏れてしまった言葉は、我ながら阿呆っぽい。
 まじ、俺は阿呆だ。松山に呆れられることがわかっているのに、こういうことをしてしまうんだから。
 しかし、松山はそんなことにも気付かずに、唇を噛んで声をださないように耐えている。鼻からは堪えきれないのがわかる、浅い息が漏れているというのに。
 
「上もいるか?」

 全身どこかしこもくすぐったがりの松山の体は、つまり全身性感帯ということだ。
 そんなに唇を噛み締めていると切れてしまうんじゃないかと、松山が声をあげずにはいられなくなってしまう、胸の突起に手をのばそうと、かわいく窪んだ臍のあたりに手のひらを這わせたとたん、松山の体が大きく跳ねる。
 それでも松山は抵抗しようと、いやいやと頭を振る。

「いらないっ・・・・!っ・・・ん」
「俺しか聴いてねえんだから声だしちまえ」
「っやだ・・・・っ」

 左手で敏感な先端の部分をぐりぐりと弄ると、確実に松山を追い詰めていくようだ。
 透明な先走りが俺の手のすべりをよくする。
 
「松山の露・・・でてきたぜ。きれいにキラキラ光ってる・・・」
「ばっ・か・・もっ・・・くっ」

 その透明な液体を指にからめとる。
 いたずら心が疼いて、ついっと松山の体から離れた。
 急に体をまさぐっていた俺の存在がなくなり、松山が両手で目を隠しながら、大きく呼吸を整えようとしていた。
 浮かんでしまった涙が覆った指の間から流れてきているのも、もう片方の指ですくいとってやる。
 そして・・・・・。

「ひゃぁっ・・・・あっ、ひゅう・・・がっ!なに・・っ?」
 
 若島津から受け取っていた習字の筆で、ついっと松山の白い腹をなぞった。
 柔らかい筆の感触が松山にはくすぐったくて、つまり感じてしまって堪らないらしい。
 その筆先には松山の朝露。
 少しはだけぎみになっていたパジャマの上着を首までたくしあげ、すっかり尖ってしまっている両胸を飾る小さな木の実を露にする。
 松山のきれいな上半身を紙に見立て、筆で字を書いていく。
 その動きが、更に松山の体をびくびくと跳ね上がらせる。

「俺のお願い。これで叶うかな?」
「ばっ・・・かっ!あほっ!!死ねっ!!・・・・んあっ!」
「まー、これはおまけなんだけど」

 そろそろいかせてやろうかと、松山の膝を割り、その中心部に俺は顔を埋めた。
 松山の頭がガクンとシーツに落ちる。
 もはや声は止められないらしい。唇からはひっきりなしに声があがるようになった。

「あっ・・・あぁ・・・ん、んっ・・・」

 敏感な部分を舌で吸いあげる度、松山の腰が跳ね上がった。
 もう我慢できないのか、小刻みに腰が揺れはじめる。いつのまにか俺の髪を必死に掴んでいる。

「だっ・・・だめ・・・っ、も、もっ・・・・出っ・・・」
「いいぜ」
「あぁ・・・っ」

 先端を嘗め、根元をひときわ強く扱くと、松山の体は痙攣して俺の口の中に白い迸りを放った。
 ティッシュで口を拭うと、荒く胸を仰がせて放心している松山の頬にキスをした。
 そして、松山の下腹をきれいに拭き、下着をきちんと履かせなおす。

「ちゃんとしろ、松山?」
「だって・・・だってお前が・・・っ!!」

 背中に腕をいれ、上半身を抱え起こしながら言うと、松山が怒ったように睨んでくるが、いったばかりで潤んだその目で睨まれてもちっともこたえない。むしろ煽られるばかりだ。
 ずっとその顔を見ていたいけど、俺もそうはいかない状態になってる。

「すぐに出かけるから、松山、俺が戻るまでに着替えておけよ」
「え?ど・・・どこ行くんだよ?」
「だから〜、お前先輩と一緒に七夕楽しむんだろ?約束の時間もうすぐだぞ。俺もいくから待ってろ」
「も・・・もう、いいよ・・・。それよか日向こそ、今何処いくんだよ!」
「皆までいわすな。このままじゃ俺もいけねえだろ」

 俺もすっかり松山の痴態で昂っている。たぶん松山から見てもわかるであろうその膨らみを指差して、あわててトイレへ向かった。
 ほんとは続きをこのまましちゃってもいいかなとは、俺も思ったがもともとそこまではやるつもりはなく。
 本題はこれからなのだ。
 俺も手早く済ませると、部屋に戻った。
 松山は一応着替え終わって待っていた。恥ずかしそうに俺の方はまっすぐ見ない。またそんなところが可愛いんだけど、って相変わらず俺の思い浮かべる言葉は阿呆だ。
 
「ほんとに行くのかよ・・・?」
「おまえが行きたいんだろ?」
「だけど・・・こんな後じゃ・・・」
「こんななんだよ?ん?」

 わざと意地悪く聴いてやる。松山の顔が真っ赤に染まる。

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
「じゃあ、行こうぜ?」
「・・・・なんでそんなに日向行く気満々になってんだよ・・・」
「別に?」

 


 約束の畑にまだ朝靄がかかる中、人が集まっていた。
 思ったより暇なやつが多かったらしい。まだ太陽ものぼりはじめたばかりで、欠伸がたくさん聴こえるが。
 松山が俺より少し遅れてついてくる。
 めざとくその姿を認めたらしい、例の先輩が松山に声をかけてくる。

「おはよう松山。日向もよくきたな」
「うす。」
「あ・・・おはようございます・・・」

 松山の声はいつもより精彩を欠いている。どうも松山はまだ性的快楽を享受してしまうことを、素直に受け止められないらしい。
 こんなこと、男だから全然気にすることねえのにって俺は思うけど。
 単に抜いてきただけなのに、松山にすればとてつもなく後ろめたい気分なんだろう。それが端々に感じられて、俺はうれしかった。だって俺しか知らないんだ。

「松山、今日は元気ないな。まだ眠いか?」
「あ、少し・・・」
「じゃあ、これでこうやって、ここに溜まった露をね・・・」

 先輩が腰高にまで育った大きく伸びた里芋の葉の端を、そうっとつまみあげながら説明しはじめるのに、松山が大きく震えた。
 松山の隣に俺は立つと、その腰にそうっと片手を回した。

「こうやって雫を皿に流し入れて・・・、集めて部屋に持ってかえるんだ。後はこれで墨をする」
「は・・・はい・・・」
「朝露、きれいだろう松山?透明でキラキラして」

 松山が腰に回していた俺の手の甲を抓りあげた。すんげえ痛いが、おれはなんともないフリをして、わざと松山の耳に周りに聴こえないように囁いた。

「松山、今、おまえ別のこと想像してるだろ?」

 抓りあげる指に力が入るのと同時に耳まで真っ赤だ。図星だろう?
 そう、俺はこの松山の顔が見たかった。
 周りのやつらは気付かない。それが楽しい。
 手を振りほどいて、俺も足下の葉から朝露を数滴集めた。まーこれでほんとに願いが叶うなら。
 東邦で日本一になること、日本のサッカーで世界一になること。そして松山と一緒にいられること。3つも叶えてもらおうって言うのは我がままか?
 
「じゃあ、早く俺らも部屋に戻って、短冊に願いごとかこうぜ?」
「なっ・・・・、そ、そ、それって・・・」
「言葉通りのことするだけだろ?それとも松山は違うこと・・・・・」
「う、うるさいっ、くそう〜〜〜〜〜、俺はぜってえ短冊に、オマエのこと書いてやる!!」
「それは光栄だな。俺もさっきなんて書いたか聴きたいか?」

 耳聡い同じクラスの奴が、きいてくる。

「日向、もう短冊つくっちまったんなら、此処にこなくてよかったんじゃん?」
「あー、俺のは別の朝・・・・・・」

 言いかけた俺の口を松山が必死に塞いで、そのままずるずると寮に向かって引きずり去る。
 もちろん部屋に戻った俺達は、短冊に願いごとを書いて・・・。
 その後は秘密だ。
 ただ、松山はやっぱり可愛かったとだけ言っておこう。


 終わり;;



 もうもうもう・・・・;;なんつーものを;;
 我ながら頭が腐ってると思います。やはりこんなものを打っていたからでしょうか。途中で最近よくやっているマックのリストアを余儀無くされました・・・。(つまりどうにもこうにも動かなくなった)
 もうアップできないかと思いました。(そのほうがよかったんじゃ・・・・)。

 朝露の話しは、私も子供の時に担任の先生から聴いた話で。あまりにも漠然としてるので気になって調べたら、地域限定だということが判明。
 そーいやあの先生、神奈川の人だったわ・・・。
 
 ああ、もうみなさん最後まで読んでしまいましたか?ごめんなさい・・・・。(02.07.07)