しばらくブランコを揺らしていたらサッカーボールが足元に転がってきた。
「すいません〜」
下校時間なのか何時の間にか公園には近くの小学生達が数人、サッカーをしていた。
そのボールを足で蹴り上げて返してやる。
…ずっとブランコに乗ってても仕方ないしな。
「ね、俺も混ぜてくれる?」
ボールを見た途端したくなるなんてやっぱり俺って根っからのサッカー馬鹿。
今では珍しくなった黒と白の斑のボールもなんだか懐かしい。俺達の頃は試合でもコレだったんだよな。
「何やってんだよ!松山っ!」
快く仲間に入れてくれた子供達に混ざって思いっきり楽しんでた俺を現実に引き戻す声。
「お前、ケガしてんのに何でサッカーなんかしてんだよっ!」
―――忘れてた。
「まさか忘れてた訳じゃねぇだろうなっ?ったく、何処に行ってるかと思えば…」
…誰の所為だと思ってる?
こんなケガ、タダの軽い捻挫だ。しかももう治りかけてるし。
なのに日向ときたらおとなしく寝てろだの、出かけるなだのとウルサイ。
心配してくれてるのは痛い程分かる。でも、迷惑は掛けたくない。
だから日向がトイレに行ってる隙に外に出た。
別に行く所も無かったので、公園に来ただけなんだけど。
「いいじゃん。天気も良いし、ホラ。」
そう言ってボールを足元に転がしてやると得意気にリフティングなんかしやがる。
やっぱりコイツもサッカー馬鹿。
結局子供達の帰宅時間までボールを蹴っていた俺達。
「…松山、悪かったな。」
しばらく無言で肩を並べた歩いていて、沈黙を破ったのは日向の方。
「ちょっと度が過ぎた。反省してる。」
分かってんじゃん。
ま、俺もケガと秋の長雨が重なってしばらくサッカーしてなかったからクサクサしていたのもあったし。
「日向、俺、今日は八宝菜食いたい。」
日向はハイハイと半ば呆れたように返事をする。
二人して空を見上げて歩く。
「秋だよな〜」
「天高く馬肥ゆる秋…ってか?」
おっ、日向にしては珍しく知的な事を…
「お前は馬の方だな。秋だからって食いすぎて肥えるなよ。」
ゲラゲラ笑う日向に蹴りを食らわせてやろうと思ったら、また金木犀の香りがしてきた。
「あ、便所の匂いだ。」
…やっぱり。
蹴りを入れる気力も萎えた。
結局秋だからと言っても限りなくロマンチックなどど言う言葉とは程遠い俺達。
でもこれが今の俺達だから。
2002.10.10