
こんな機会は二度と訪れないんじゃ無いかと思った。
俺は、堪えていた思いを全て投げ出す気持ちで、松山を抱き締めた。
カラダの温度が2、3度上昇した気さえする。ふだん松山が無意識にする媚態がどんなに艶っぽいか。それが今は本人が意識して誘っている。
湯気に包まれたバスルーム。しかし、通常よりも広くとられた洗い場のせいで熱はそんなに篭っていない。しゃがんだ足先にあたるタイルがひんやりと冷たさを伝えてくる。
抱き締めた手をゆっくりと這わせながら、そのまま松山の腰まで下げ、そこを覆っているブリーフを脱がした。松山も尻を持ち上げて脱がせやすいように体重を移動する。
お互い全裸になると、俺は片手を延ばしてシャワーヘッドを手にとった。少し熱めの湯をしゃがんだまんまの松山の肩から浴びせる。そして、棚の上にあった小さなボトルを手にし、その中身を手のひらにぶちまけた。
ぬるぬるとしたボディーローションのついた手を、俺に凭れ掛かった状態の松山のカラダに這わせはじめる。
いざことがはじまると、やっぱり恥ずかしいのか真っ赤になった松山に微笑んで、俺は欲望の赴くまま手を滑らしていく。ローションの力を借りて、いつも以上に滑らかに動く指。意図しない場所で松山のカラダを支えるため手に力がはいってしまうのに、松山も感じてしまうのか密接した胸板にカラダの震えが伝わる。
俺は床に胡座をかくようにどっかりと座りなおすと、松山のカラダを反転させ足の間に座らせ背中から抱きなおす。上体を俺の胸に寄り掛からせると、松山の股間に手を延ばし、半ばに勃起しているモノに両手を添えた。
「あんっ」
「さっきの・・・きれいにしないとな」
「やぁ・・・ん」
松山自身は先程の名残りの飛沫だけではなく、またゆるゆると起き上がり、新たな露を零し始めていた。
たまに爪先ではじくようにくびれのあたりを刺激しながら、ぬるぬるの手で勃ちはじめた幹を滑りに任せて摩擦する。
「洗っても洗っても、とれないぜココ」
「はぁ・・・・あんっ、やっ、やっ・・・!」
まるでエロビデオみたいな台詞も、くるくると変わる照明の光の中で鏡に映ってる俺達の姿と相まって、違和感なくでてきてしまう。
ローションの滑りによる愛撫は、松山の欲しい刺激にはあとちょっと足りないらしくて。
それでも淫らに俺の指先は、昂りを示す松山の中心をさらに追い詰めていく。
「・・あんっ・・ひゅう・・・」
さざ波のように背中が震えるのに、追い討ちをかけるように首筋に唇を寄せた。ひときわ大きく背中が波打ち、やりきれない快感を追って、切な気に松山の腰が揺れる。
そんな反応に俺は満足し、双丘の間に隠れた秘所に指を延ばした。指先に残ったローションのせいで、難無く中に潜り込む。
「はっ!」
松山の腰が一瞬浮き上がり、カラダが硬直する。
俺はすっかり指を埋めてしまってから、ほんの少しだけ動かした。すると、とたんに、松山のカラダは反り返った。
指を増やして内襞を擦り何度もしつこいくらいに抜き差しすると、松山は声を漏らさずに喉を鳴らし、大きく胸をあおがせた。
押し込み引き出すだけだった指の動きを変えて、もぞもぞと動かし始める。前立腺のあたりだろうか、これまでのセックスで覚えたその一点を押すと、松山のカラダは痙攣するように震える。
「この・・・辺だよな?」
「あぁ!!、やっ・・・」
「や、じゃねえだろ。もっと変になれよ・・・。もっと声あげてもイイから・・・」
疼きに耐えかねて無意識に逃げようとカラダを捩る松山だったが、俺は指は深く埋め込んだまま、探り出した場所から抜くつもりはなかった。
「んっ・・っぅ・・・んっ!」
肩ごしに振り返った松山の顔は、苦痛と紙一重の悦びに紅潮していた。潤んだ瞳からは涙もぽろぽろと零れ始めている。たまんねえ。
やっと指を引き抜くと、俺は松山の腰を持ち上げた。
「ちょっとこのままでいて?」
「・・・んっ」
すっかり天を向いている俺自身にローションを塗りたくると、左手で根元を支えた。そして腰を浮かせさせていた松山の尻を右手で引き寄せる。指を埋めていたところに熱くなった俺自身の先端を宛てがうと、一気に松山の腰を落とさせた。
「ああ―――!!」
十分に潤っていたため、すべてが納まった。しかし俺を絞るようなきつい締め付けに、俺も一瞬苦し気に息を吐いた。
「っう・・・」
「あっ・・・ひゅうがぁっ!」
「動いてイイ?」
きつく締め付けるだけだった松山の内部が、入れた瞬間の緊張が弛んだのか絶妙な動きに変わり始めていた。俺はどんどん腰から生まれるやるせない快感に、ゆっくり腰を突き上げ動き出した。
「あっ・・・はぁん・・・あっ・・あんっ」
松山から愉悦を滲ませた掠れた声が漏れ始める。バスルームの中にその甘い声がエコーして耳からも呷られる。
収縮し俺自身を微妙な感覚で締め付ける松山の内襞を擦りあげるように、何度も何度も奥まで突き上げた。
「ひゅうっ・・・!」
俺の名を呼ぶ切な気な声に気付き、ふと松山自身へ視線をやった。
背中から抱かれた状態でどこにもつかまるものがなく、先程までは所在なげにだらりと下げられていた松山の手が、すっかり己の快楽に没頭して松山自身を慰めるのを忘れていた俺に焦れてか、自分自身を擦り上げていた。
「悪い、自分でしなくていいから・・・ほら」
「あっ・・ああっあぁあ!!!」
松山自身を強く握り、擦りあげると松山の頭はがくんっと後ろ向きに俺の肩に落ち、白い首筋を弓なりに仰け反らせた。手の中ではち切れそうに松山のモノがびくびくと震える。
松山の感じた刺激がそのまま俺を埋めたままのナカに伝わり、ぎゅうと絞り込まれる。
もう互いの絶頂は間近だった。
「ああっ・・・・もっ・・・だめっ・・・!!」
最後にひときわ深く突き上げると、松山はびくびくと全身を震わせて達した。数秒感引きつるように俺を不規則に締め付け、ぐにゃりと体から力が抜けていく。
一瞬遅れて俺も松山の中へ自分を解放し、その体をしっかりと抱えなおし愛おし気に火照った松山の肩に顔を埋めた。
お互いの荒い呼吸は、なかなか落ち着きそうにもなかった。はぁはぁという音だけがバスルームに響く。俺は松山の肩甲骨あたりに頭を埋め、松山も頭をがっくりとうなだれたまま、息のおさまるのを待った。
腕の中の松山の肌は汗でしっとりと濡れていた。
うなだれたままの松山を肩ごしにそっと覗き込み、耳もとに声をかけた。
「・・・松山、大丈夫か?悪ぃ、追い上げ過ぎたな」
「ん・・・」
俺の声にぎゅうっと瞑られていた目蓋がゆっくり開かれる。
そして松山は、背中から回されている俺の手をほどくと床に両手をつき、繋がったままのそこから、既に萎えた俺自身を抜こうと腰を引き上げ身じろぎした。
しかし支える腕に力がうまく入らないらしくよろめきそうになるのに、俺は松山の腰を再びしっかり掴み持ち上げてやる。一つになっていたところから俺の注ぎ込んだ白濁した液体と共に、俺自身を引き抜いた。
「っ・・・」
浮かした尻から溢れたものが太股を伝って、タイル貼りの床に垂れていく。その感覚に松山が幽かにびくりと体を震わせた。
俺の放出した痕跡にすら感じてくれている―――そんな些細なことにすら、激しい愛おしさを感じ、腰を掴んだ手に力をいれ松山を俺に向きなおさせた。
互いに目が合うとどちからからともなく唇を寄せる。
「松山・・・俺、もっと・・・してぇ」
「うん・・・俺も・・・。今度は日向の・・・顔みせてほし・・・」
キスの合間に、沸き上がる欲望を素直に声にしてしまうと、松山もうつむきながら小さな声で同意の言葉をつぶやいた。更に嬉しいリクエストまでしてくれやがった。俺も今度は松山のイク顔見たいし。やっぱり次は正常位でゆっくり丁寧に愛してやろう。
俺の背に両手を回してしがみついている松山の腰に手を回し、強く引き上げ立ち上がらせる。すぐにしゃがみ込んでしまいそうにがっくりと折れる松山の膝裏に、俺は片手を入れそのまま松山のカラダをふわりと持ち上げた。
「あっ」
「ココじゃ背中が痛いからな」
ベッドにもつれあうように倒れ込む。
濡れたままの松山の体に覆いかぶさると、再び唇を重ねた。深く深く重ねると、松山が驚く程情熱的に俺を求めてくるのを感じた。
舌を絡め、吸い上げ、口内じゅうをくまなく這い回る。
「くっ・・・・はっ・・・・んっ」
俺は唇を外すと火照った頬から耳朶へ、噛み付く勢いで舌を伸ばした。松山の肌に残る水滴をすべて舐めとるかのように、丹念に舌を這わしていく。
肌理の細かい滑らかな肌だ。
妖しい赤系の照明の中、俺の愛撫に悶える松山の姿と、濡れた響きの吐息。後から後から興奮が沸き起こる。目眩を覚えるほどだ。
密着する胸の隙間に指を滑り込ませると、堅く尖った先端を捕らえた。
「あぁっ、ひゅう・・・がぁ」
ビクンと揺れて反らされた喉に、歯が当たる程強く吸い付いた。普段は付けないように気をつけているのだが、今日は止められそうも無い。松山は全て俺のものだという印を残す。紅く鬱血した跡を舐めて更に下へ移動していく。
そうしながらも手の動きは休まずに続ける。指で挟んだ粒を押しつぶした。
「あぅ・・・・っ・・イイ・・・っ・・・やっ」
「イヤ?それともイイのか?」
大きく上下する胸のてっぺんで充血してしまった松山の乳首が嬲られるのを待っている。舌を尖らせて唾液を落とすように先端を突くと、たまらないのか松山が声をあげた。
「や、ぅぁあ・・・・も、もっと・・・つよ・・・・く・・・」
愛撫をねだられ、吸い上げたまま舌先を揺するように動かした。松山は悶えながら放置されていたほうの乳首に自ら指を伸ばしていく。胸に吸い付いている俺の目の前で、自らを慰める松山の白い指が淫らに動き始める。
「今日のお前、すげえ・・・いい。でもココは俺がするから」
勃ちあがらせようと捏ねて引っ張る松山の親指と人さし指を、俺は掴んでベッドに縫いとめた。潤んだ目が恨めしそうに見上げてくる。なんて表情してくれるんだろう、コイツは!ホント、こんな松山・・・みたことねえ。
ふっと息を吐き、気を取り直すとじっと見つめながら囁いた。
「もっとヘンになっちまってイイっていっただろ?シテほしいことなんだってしてやるから・・・。どうされたい?」
刺激の途中で放置された乳首に、熱い吐息を吹き掛けてやる。
「・・・ぁっ、・・・・すって・・・噛んで・・・っ」
首を伸ばして要求に応えてやると蕩けるような嬌声が溢れた。 そして、いつのまにか俺の腰には松山の脚が絡められていた。腹に松山の昂りが擦り付けられている。手をそこに伸ばすと拭って無かった水滴ではなく、あらたに零れ始めたものでぬるりと滑った。
「・・・・やぁ・・・ぬるぬる・・・して・・・・」
「松山が濡らしてんだろ・・・・感じる?」
「・・・はぁっ!」
快楽の淵にずぶずぶと沈んでいきながらも、落ちきれない含羞で歪んだ松山の表情は俺をぞくりとさせる。
「俺、でよがる松山、全部見せて?」
紅く染まった目元に唇を押し付け、ピクピクと瞬く睫を舐めた。松山から求められる興奮に、俺はイレなくても達してしまいそうな程感じていた。実際、松山からは見えないだろうけど、俺自身はさっきから先走りがどくどくと溢れてきている。
「ひゅう・・・が・・・・ぁ・・・」
手の中で張り詰めた松山自身のくびれを擦る度に、くちゅくちゅと淫らな音が響く。
腰に絡められた片脚を引き上げて大きく開き、茎を擦り上げながら指先で袋をくすぐる。きゅうっと引き締まるそれを宥めるように柔らかく揉んだ。
「やぁ・・・っ!でちゃ・・・・く・・ぅ!」
「イッて・・いいぜ?」
先端の穴を弄って促してやると、そこは呼吸するようにヒクヒクと開いて、熱い迸りが俺の手を濡らした。
眉を切な気に顰めて、松山が先に達した。
「あ―――っ、あ・・ふ・・・ぁ・・はぁ・・・」
びくびくと押し付けられた松山自身が少しづつ戦慄きを鎮めていく。膝立てていた脚から力が抜けて、ずるずるとシーツを滑って投げ出された。
放心したように虚脱した松山の体に、俺は休む間も無く手のひらに残った精液をさらに奥へと塗り付けるように滑らしていった。再び空いた方の手で、松山の脚を開かせる。
「・・・あっ・・・ひゅうっ」
指先で辿り着いたくぼみの周りをなぞると、松山の震えが俺にも伝わってくる。紅く色付いたソコは、俺を誘うようにひくつく。指先で突くと、切なそうに腰を捩った。
「俺の顔みながらしたいんだろ?今・・・イレるから・・・・」
濡れた指先を熱い肉がうねる内部へ埋めていく。先程バスルームで一回入れているせいか、迎える準備はすでにできていて、蕩けるように襞がからみついてくる。引き抜いて改めて二本揃えて差し入れても、松山のナカは軋むことも無くしっとりとまとわりついてきた。
「ん・・・あっ・・・い、・・・っ!!」
深く指を突き刺すと、びくんっと背を反らして引き絞られた内部を、押し開くように掻き回した。
「く・・・いやぁ・・・・また・・・っ」
松山自身は張りを取り戻して、新たな先走りを零していた。絶頂を逃そうとする松山自身の根元を片手できつく戒める。
荒い息と汗が、まわりの空気を湿らせていった。
俺は埋め込んでいた指を引き抜くと、そこに爆発寸前の俺自身の切っ先を入り口にねじ込んだ。
「っふ・・・うぁ―――っ」
「くっ・・・つ」
押し返すような強い圧迫の中を、欲望のままに深く沈んでいく。空いた手で松山の体を引き寄せ、力を込めて抱き締めると、松山も縋るように両手を伸ばして俺の背に手を回してきた。喘ぐ吐息に混じって、音にはならない俺の名をよぶ声。
締め付けて追い縋るような肉襞を引き剥がすように、激しい抽挿をくり返す。
ぐちゅぐちゅと濡れた卑猥な音とともに、俺の大腿が松山の尻にぶつかる乾いた音が、接合部分からひっきりなく起こる。ゆさゆさと重ねた体が揺れる。
「あ、やぅ・・・っ、つよ・・いっ、奥まで・・・来てるっ・・」
イクのを俺の手に塞き止められたまま、限界の状態の松山が全身を痙攣させる。内部は悦びに妖しく蠢いて俺を搾り取るように収縮をくり返す。
たまらず、俺は松山の根元を解放し、両脚を方に付く程折り曲げて、真上から屹立を打ち込んだ。その動きにあわせて俺の腹に擦られた松山の昂りから溢れた蜜が、松山の色付いた胸元に糸を繋いでいた。
「・・・・っはぁ・・・もっ!ひゅうがぁっ!!」
「一緒に・・・・なっ」
激しい抽挿を受け止める内壁が、痛いくらいに俺を締め付けた。抱きしめた松山の肌が、限界を超えて粟立っていた。
「松山―――!!」
ありったけの思いをこめて名前を呼びながら、愛しい松山の中へ注ぎ込んだ。松山は切なくなる程甘い声を漏らし、身を震わせて俺を受け止めた。
「・・・ひゅうが、もういい・・・抜け・・・よっ」
さすがに時間をあけずして何度も達したせいか、暫くしてもう十分とでもいうように松山が訴えたが、それにさえ俺は新たな欲情を誘われた。
松山のナカはあったかくて挿れているだけでも気持ちがいい。更に、松山が言葉を紡ぎ身じろぐだけでも微妙に締め付けらるのがたまらなかった。
「やだ」
「あ、ばか・・ぁ・・・、やっ!」
抜かずに再び回復した楔で、ゆっくりと突き上げた。今度は多少の余裕があった。
松山の中で放ったモノが潤滑剤の役目を果たし、抜き差しを滑らかにする。松山もすぐに快感を訴えはじめる。
「いやぁん、あっ、あんっ」
前立腺を刺激する松山の一番弱い所を執拗に擦り上げた。追い上げるような快感に歪んだ松山の表情をしっかりと見つめながら。
こんな顔させられるのは俺だけだと思うだけで、繋がったソコの刺激が甘いものに変わっていく。
固く尖った胸先や、濡れて震える松山自身に触れると、ますますキツく締め上げられて俺の方が歯を食いしばる羽目になった。
目を覚ました時、明るい日ざしではなく見なれぬ天井が目に入った。そうだ、昨晩松山が熱出してラブホに来て―――。
その後の無茶も思い出し、慌てて腕の中の松山の額に手をあてる。裸のまま眠ってしまった。しかし、空調がよく効いて、抱き合って眠っていても暑いとも寒いとも思わない。手のひらからもほのかに暖かい体温が伝わるだけだった。
どうやら熱はすっかり下がったらしい。まああれだけ汗かけばな。汗は潜り込んだシーツが吸い取ってくれたようだ。
ほっとして松山を抱き締めなおす。触れあう肌が心地よい。当の松山は、まさに死んだように眠っていて当分は目覚めそうも無かった。
たぶん、今までで一番無理をさせた。松山も望んでいたけれど。気が付けば俺の方が夢中になってしまっていた。気を失っても許してやらず、意識を引き戻してまで抱き続けたような気がする。
最後の方は、声さえもあげなくなって啜り泣くような息を漏らすだけだった―――。
何やってんだ俺。そろそろと布団をあげ、体をおこすと酷い有り様だった。
白い肌には紅い痕が散らばっている。腹部や下肢は汚れたままで、俺が注ぎ込んだものが松山のほっそりと引き締まった腿の内側にこびりついていた。
拭いてやらなきゃ・・・。自業自得で情けないことだが俺も腰が重くて、今はとてもバスルームまで運べそうに無い。せめてそれくらいはと思った。
下着とジーパンだけ履いてバスルームへ向かい、タオルを湯で湿らして戻った。
眠ったままの松山の頬に手を伸ばし、無防備な唇にキスを落とした。触れただけなのに、長い睫の先がぴくりと動いた。
「ん・・・・日向・・・」
半分まだ沈み込んでいる意識のせいか、いつもよりもずっと幼く見える。舌も上手くまわっていないようでどこかたどたどしい。ゆっくりと焦点のあわない瞳が現れる。
俺はもう一度、触れるだけのキスをした。
「どうだ?」
「・・・・ん?」
起き抜けで体調を確認されたことがわからないらしい。自分の額を松山のそれにつけてから、うなずいた。
「熱はねえけど」
「あ・・・、もう・・・だいじょうぶ」
熱だしてココに来たというのを思い出したのと同時に、当然、昨晩のセックスも思い出してしまったのか一気に顔をかあっと赤らめ、俺の視線から逃げるように顔を反らした。
「悪かったな」
「・・・え?」
「俺が、調子に乗り過ぎた」
「それ・・・俺が・・・、―――もう、いいよ」
ため息をつくように掠れた声が囁いた。これ以上は無理というくらい、真っ赤になって諦めたように言う松山に、くすりと笑った。
「からだ、拭くからよ。さすがに俺もバスルーム連れてってやる自信がねえ」
「え・・・」
上がけを剥がされて、俺の意図することを察したようだった。いい、といって逃げようとするが、その動作は常よりもずっと鈍くて、敢え無く俺の腕に捕らえられる。立てるはずもないんだから、無駄な抵抗だった。
「奥もちゃんと綺麗にしてやるから」
「しなくていいっ!!」
松山の抵抗を押さえ込むくらいは容易いことだった。掠れた罵倒の声が意味を為さなくなってくるのに、そう時間がかからなかった。
結局、チェックアウトぎりぎりまで部屋にいた俺達だった。
松山も多少よろよろはしながらも、その時には自分で立って歩いた。一緒に出ていくのはイヤだと言い張って、ひとり先に駐車場に向かうという。ラブホテル、男二人で出ていくのを人に見られたく無いというより、自分がソコにいるということが無性に恥ずかしいんだろう。
部屋を出ていくその足下はなんとなくおぼつかない。腰が立たないというだけではなくもう一つ理由が合った。
「これ、どうすんだ?」
俺はバスルームの片隅に丸められた布を摘まみ上げた。昨日松山の履いていたブリーフだ。
洗い場で脱ぎ捨ててしまった為、濡れて使い物にならなかったのだ。なので松山はいま、肌の上に直接ジーパンをはいている。普段下着で覆われたそこが、直接固い布地に擦られてしまうのが変な感じなんだろう。
「〜〜〜〜見せるなよ!!」
「じゃあ、俺が持って帰る」
「なんでだよ!!」
「はじめてのラブホ記念にすっか♪」
「・・・・え?日向、おまえ初めてきたの?」
「え?・・・・そうだけど・・・松山・・・おまえ・・・まさか!」
「・・・・・・・」
「誰ときたんだよ!!」
廊下に出かけた松山が、扉を閉めて再び俺の方に戻ってくる。
甘い気分でいたのを、一気に吹き飛ばされる。返事が無いのは、俺じゃ無い誰かと松山がラブホテルで睦んでいたかもしれないという衝撃の事実なのか?
頭が真っ白になりそうなのを、必死で堪える。こんなことならもっと松山を乱れさせればよかった。その誰か以上に、そいつを忘れさせるくらい―――。
頭のなかをぐるぐるといろんなことが駆け巡る。不思議と松山に対しての怒りとかよりも、誰かわからないヤツに対して嫉妬にもにた感情が沸き上がる。
俺の前にたった松山が俺の顔を両手で引き寄せ、睨み付けるように真直ぐにじっと目をみつめられる。なんだよ・・・・。
「俺は・・・えっちしたのも、ラブホきたのも―――全部、日向が初めてだよっ!!悪いかよ!!」
「!!」
怒ったように言い捨てると、3分したら来い、と怒鳴りながら先に松山が部屋を出ていった。
ベッドの中で甘えていた松山とは別人みたいな態度。でも、怒鳴りながらも恥じらった表情がやっぱり俺をそそる。
コレが今日のとどめだった。
安心したのと、言葉で松山がそういってくれて・・・妙に嬉しかった。全部俺が、初めてか・・・・。
松山はやっぱり俺が思う以上の言葉や態度をくれる。松山に振り回されっぱなしだけど、それが俺の人生を楽しくしてくれてるんだ。
熱だしてぶっ倒れて心配させられて、甘えられて、嫉妬に狂わされそうになって―――。喜ばされて。
だから松山、ずっとこれからも。
とどめをハデにくれ。
終わり〜〜〜
久々にエロ書いてみました(爆)。実は明日香様へのお誕生日プレゼントとして書かせて頂いたものなのですが、ウチの小説最近更新してなかったので、駄文を増やすべくお願い申し上げてアップさせていただきました;;ひさしぶりに長い裏モノに挑戦でした〜〜〜。人の為といいながら、結局自分が一番楽しかったです;;こういう松小次えっちが好きなんですよ〜〜(爆)。(03.01.23)
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