「・・・ずっと夢だった・・・」
日向が噛み締めるようにゆっくりと呟く。
そして愛おし気に俺自身をまたゆるやかに扱く。
コイツが、日向が、ずっと好きだったヤツって―――。
問いかけようとした俺は、言葉より先に小さく叫んだ。日向の指が俺自身をやんわりと握った後、その先にある窄まりに触れたからだ。
「やっ!」
びくんとカラダが跳ねる。日向はじっと俺を見据えた。そして探るように、少し迷っているような視線を送ってくる。
「ずっと、ずっと松山が欲しかった。わかるか?」
「・・・わかんねえ」
「・・・お前がイヤなら―――」
「イヤなら?」
俺だって男だし、子供じゃねえんだから今までの行為のいくつく先くらいはわかっていた。
でも日向にコレ以上させてしまうことに、逆に俺は迷いを感じていた。男同士でとか、そういうことはもはや気にすることではない。そうではなくて、俺は日向の想いに応えることができるんだろうかっていうこと。
日向は、俺をとても好きでいてくれるらしい。こうやってカラダを求める程に。
だけど俺は―――日向と同じように、日向を好きなのかどうかと言われると、いまはわからないとしか言えない。
嫌いではないのに。好きなのかもしれないけど。じゃなきゃこんなこと出来ねえよな。
カラダだけの関係で済むような相手ならって言ってしまえば元も子もないが、日向がそんな風に俺を求めているとは思えないだけに。
「松山・・・好きなんだ」
「・・・」
「ホントはイヤって言われても・・・止められねえ・・・」
「・・・だよな」
どうしよう。俺は日向を、日向が俺を想う程に好きになれるんだろうか。その資格があるのならここで、うん、と言ってしまった方がいいんだろうか。
日向は、俺の言葉を待っている。止められないとはいいながら、きっと俺がイヤといえば、コレ以上は手をだしてこないであろうことが、なんとなく感じられた。
「進めよ」
「え?」
「先、進めろよ。今さらもう、戻れねえだろ?」
「・・・こういうことだぞ」
耳もとに、日向の低い声が響き、俺はぞくりと震えた。
おれの下腹に顔を埋めるようにした日向の吐く息に、奥まったところに触れる指に、カラダはぴくぴくと反応する。
これから起きることには知識の上では恐怖がある。まさか自分が、そして本当に男同士できるのかと不安もある。
周辺をなぞっていた指がとまる。そしてぬるんとしたものが俺の後ろの窄まりに触れた。
先程放出した二人の精液とともに、指がそこにツプリと埋め込まれる。
「あっ!」
「痛いか?」
「・・・驚いただけだっ」
「そうか」
ああ、どうなっちまうんだ俺。日向の指が俺の中で動く。カラダの内側を丁寧に擦られ広げられる。
そこから漏れるくちゅくちゅという、湿った音が恥ずかしい。
「・・・ひゅう・・・っ・・、っは・・・、はず・・・かしっ・・・・!!」
しっかり口にしたつもりだったのに、もう俺の口からでてくるのは喘ぎだ。
ぐちっと日向の指が出ていく。その動きに背筋に快感が走る。中の一点を強く刺激された時の不思議な気持ちよさ。
前を弄るのとは違った強烈な感覚。直接神経に触れられたように、頭を混乱させる。
俺は感じてしまっているんだ。喘いでしまうんだ。
「んっ・・・」
また日向の指が入ってくる。今度は先程よりも太くなって。指の数が増えている。
「・・・ああんっ・・・」
一度認めてしまうと、もう、意識がそこに集中してしまう。なんだかいろいろ考えているのが馬鹿らしくなってくるのだ。
日向は入れたり出したり、内部で曲げてみたり。狭い部分を擦る。
日向も興奮しているようで、うわ言のように俺の名前を呼んでいる。ホントにコイツ俺が好きなんだな―――。
「ん、ん、んっ・・・あっ・・・ん!」
ずるっと抜かれる感覚、指がでていく度に、俺はびくびくとカラダを痙攣させている。
すると日向が感嘆したように呟く。
「でるときがイイのか」
わざわざ口に出すなよ!しかし、俺ばかりが気持ちよくなって。
―――中が、こんなにいいなんて。
だんだんとつのる欲求。腰が浮き上がる。
俺自身は放出を求めて硬く、張り詰めているはずだ。
「・・・い、あっ・・ああ、イキそ・・・・っ」
「まだだ」
ふいに指がそこから抜かれ、ひょいっと日向が俺の両足を持ち上げた。
はぐらかされてしまっている熱が、行き場を失って俺のカラダの中で荒れ狂っている。
指を押し込んでいたそこに、日向が熱い塊を押し当てた。
「松山・・・もうやめねえぞ」
「・・・来・・いっ・・よ」
「言ったな」
日向は欲望をむき出しにしたオスの表情だ。こいつがいつも表される猛虎のような、獣の顔。
顔をゆがめるように余裕のない笑みを浮かべる。
そして日向は唇の引き締めると、ぐぐっと中に入ってくる。
熱い塊が、日向の欲望が、狭い壁を擦りながら、無理矢理にそこを押し広げ奥まで埋め込もうと。
「い、・・・・いっ・・・・」
いってぇ―――っ!!!すっげえ、痛え!!あまりの痛さに声もでない。じわっと涙が目尻に浮かぶ。
想像以上の圧迫感だ。だって日向のモノ、指なんかとは大違いだし。正直俺のよりでかかったし。
無意識に日向の背中に腕を回し、力をこめてしがみつく。
更に日向がカラダを進めてくる。このキツさはかなり日向のモノを締め付けているはずで。相当日向だって無理してるとおもうんだけど。
「ひっ・・・く・!」
ちくしょう、痛がってるのに入れるかな、コレ以上。
耐えきれず。すこし考えろの思いを込めて、日向の背中に爪をたてる。
「松山・・・息を吐け。・・・深く吸って・・」
日向が俺の背中を抱き、優しく摩る。
言われて息を詰めてしまっていて、呼吸すらすることも忘れていたことに気付く。
言われた通りにゆっくり息を吐いた。そして深く空気を吸う。次第にカラダのこわばりがほどけてくる。いつのまにか日向が埋め込まれている部分も、相変わらずキツイが痛みだけではなくなってくる。
余裕が少しできて、日向の顔をみたら汗が伝って、日向の方が辛そうだ。
「ひゅう・・・が?」
「痛くねえか?」
気遣うような声。俺が慣れるのを待っているらしい。
そしてまた抱き締めてくれる。
「入って・・んな」
「ああ。お前の中に俺はいる」
嬉しそうに日向が言う。日向と一つになっている。
俺も―――ちょっと嬉しかった。
・・・俺も、日向を欲していたのかもしれない。やっぱ俺も日向をちゃんと好きなのかな。
日向の汗だくで、俺と同じようにはぁはぁと荒い呼吸の顔をみたら、とても愛おしくなった。
「ひゅうが・・・好き」
「松山・・・」
思わず言葉にしてしまった。
それに日向が敏感に反応する。俺の中で一回り大きくなったのが分かる。
すげ・・・、やっぱ日向の想いの方が上手だな。実感。
「松山・・・一気に・・・いくぞ!」
ゆっくりと日向が腰を引き、突き入れてきた。
言葉にならない、熱い痺れに、つま先まで震えが走っていく。突かれる度に、痛いんだかなんだか分からなくなってきた。
「んっ・・・ああっ!」
もっと・・・、もっと中を擦って欲しい。早く俺をイカせて欲しい。もっと、もっと強く。
日向はそれが聞こえたのかのように、俺の腰をしっかり抱えなおすと、力強い律動で激しく抜き差しを始めた。
「はっ・・・ああ、ああんっ・・・あん」
「いい・・・松山・・・、お前ん中・・・・すっげえ・・・いい」
「ん、っ・・・、そ・・・そん・・・な・・・にっ?」
「松山っ!」
日向の動きがどんどん俺を高みへと押し上げていくようだ。もう、痛さはわからなくて、気持ちよくて、だけど涙がどんどん溢れてくる。
「松山・・・」
日向の荒い呼吸。切な気に俺を呼ぶ声。
「あ・・・、ああ・・・っ」
繋がっているそこから溶け合って、触れている肌も全て一つになって、もみくちゃになって、翻弄されて。
俺と日向のカラダは確実に高みを目指してく。
日向にされているんじゃない。俺にさしてもらっているんじゃない。
これは二人の共同作業だ。
日向の勢いが増す。俺も日向にしがみつく。
「ま・・・つや・・ま、いい、いく・・・いくぞっ」
「あ―――あ!」
日向の低い唸り声につられるように、ふいに俺は絶頂を迎えた。
長く強烈な絶頂感。
日向も俺の中で、大きく脈打ち熱いものを吐き出していた。
つづく